仮名手本忠臣蔵(三月大歌舞伎) 昼の部
歌舞伎座で、「通し狂言 仮名手本忠臣蔵」3月大歌舞伎の昼の部を見てきました。
歌舞伎座では、2013年の「歌舞伎座新開場柿葺落 十二月大歌舞伎」以来だそうです。
私にとっては初めての通し狂言なので、昼の部から夜の部と順番通りに、かつ中村隼人さんが出演される昼Aプロ、夜Bプロで、という条件でチケットを何とか確保できたのですが、残念ながら花道からは遠いお席でした。昼Aプロ、夜Bプロは人気で完売しているようですので、チケットが入手できただけでも運が良かったです。
■初演
寛延元年(1748年)8月、大坂竹本座にて初演
■作者
並木千柳、三好松洛、竹田出雲
全十一段
■昼の部
大序: 鶴ヶ岡社頭兜改めの場
三段目: 足利館門前進物の場
同 松の間刃傷の場
四段目: 扇ヶ谷塩冶判官切腹の場
同 表門城明渡しの場
浄瑠璃: 道行旅路の花聟
■仮名手本忠臣蔵とは
『仮名手本忠臣蔵』の「仮名手本」とは、「赤穂四十七士」を「いろは四十七文字」になぞらえたものだそうです。
江戸時代は幕府に関わる実際の事件をそのままお芝居にするのは禁止されていたので、南北朝時代に置き換え、上演されたものです。
吉良上野介→高師直
浅野内匠頭→塩屋判官(えんやはんがん)
大石内蔵助→大星由良之助
大石主税→大星力弥
物語は全11段で、高師直による判官の妻・顔世御前への横恋慕から、判官の切腹、由良之助以下の四十七士が討入りを遂げるまでを描いています。
口上人形
口上人形は、通し狂言として上演される時だけ登場するそうです。
開演前、10時50分から口上人形が登場して、役人替名(やくにんかえな:配役)を告げます。
「エッヘン、エッヘン」と咳払いした時は看板俳優の紹介だそうで、2回名前を読み上げていました。
また、途中で首が1回転するなど、ユーモラスな一面もあります。
大序
鶴ヶ岡社頭兜改めの場
四十七回打つ柝(き:開幕合図の拍子木)の音に合わせ、初めは静々と少しずつ幕が開いていきます。下を向いた「人形身(にんぎょうみ)」の役者が現れ、語りが進むと、少しずつ顔を上げていきます。
舞台は、鎌倉鶴岡八幡宮。
征夷大将軍足利尊氏の命で新田義貞の兜を奉納することになった弟直義。
新田義貞の兜を特定するため、塩冶判官の妻、顔世御前(以前宮仕えで義貞と面識あり)が呼ばれ、「蘭奢待」の香がする兜を義貞のものと見極めます。
美しい顔世御前に恋文を渡して口説く高師直。桃井若狭之助が彼女を助けますが、逆上した高師直は、若狭之助を罵り、侮辱し始めます。怒った若狭之助は刀を抜こうとしますが、通りかかった塩冶判官がこれを止めます。
「いろから始まる忠臣蔵」
とイヤホンガイドで解説されていましたが、発端は「いろ」=高師直の顔世御前への横恋慕という「いろは四十七」に掛けた構成になっているそうです。
三段目
足利館門前進物の場
■出投げ(大道具さんの見せ場) ゴザの長さは22m !
大道具さんが、舞台に上敷(じょうしき)と呼ばれる長いゴザのようなものを、上手から投げて一気に舞台の端から端まで敷き詰めます。72尺(約22m)もあるそうです。まっすぐ正確に転がすにはかなりの技術が必要だそうで、何度も練習されるのだとか。きれいに決まっていました。
■「ばっさり」
足利館の門前。
師直は、桃井家家老の加古川本蔵が来るとの知らせに、本蔵は若狭之助の鶴岡八幡宮での遺恨を晴らしに来るつもりだろうと予想し、家臣の鷺坂伴内に「ばっさりやれ」と言いつけます。伴内は言われた通りに、家臣たちに「ばっさり」の練習をさせます。しかし、やってきた加古川本蔵から賄賂を貰うと、あわてて「ばっさり」をやめさせようとしますが、家臣たちは練習通りに「ばっさり」やろうとし、、、というコミカルな場面です((ドリフのコントのルーツ??)
こういう、くすっと笑える場面も入っているところも、名作と言われる所以なのだろうと思います。
鷺坂伴内の着物は、袴をたくし上げた提灯のような形で、膝から下は足が見えている奇妙な恰好です。「高股立ち(タカモモダチ)」と言うそうです。また膝下の布は、足の疲れをとるために足三里のツボにお灸をすえた跡を隠すためだそうで、「三里あて」と言うのだそうです。
灸の跡を隠すのであれば、裾を下せばいいような気がしますが。。。
■松の間刃傷の場
その後、松の間で賄賂を貰ったことで不本意ながらも若狭之助に平謝りした師直は、顔世からの恋の叶わぬ返事も重なり、夫である判官に八つ当たり。あまりの罵詈雑言に耐え兼ねた判官は、遂に刀を抜いて師直に切り付けてしまいます。その時衝立の陰から本蔵が飛び出し、判官を止め、師直は上手へと逃げていき、大名たちが大勢出てきて判官を取り囲むところで幕となります。
四段目
■通さん場
四段目は、“通さん場(とおさんば)”という客席内の出入りが出来ない演目だそうです。
私も少し早めに客席に戻りました。
扇ヶ谷塩冶判官切腹の場
扇が谷の屋敷に蟄居謹慎している塩冶判官に、判官は切腹、その領地も没収との上意を申し渡されます。塩冶判官は最も頼りにしていた家老の大星由良助が帰ってくるまで切腹を待ちますが、あまりにも遅いので泣く泣く腹に刀を突き立てます。
ようやく由良之助が到着。
「遅かりし由良之助」 というセリフは実際はありませんでした。
「シーン」と静まり返った客席。緊張感がひしひしと伝わり、
携帯も鳴らず、咳をする人もいませんでした。
(なぜ、他の演目では静かに出来ないの?)
判官は「この九寸五分は汝へかたみ(かたき)」と敵をとることを由良之助に託します。
判官の亡骸は籠に乗せられ、籠は肩に担がれずに腕で担がれていました。昔は判官の役者はそのまま籠で家まで送り届けられたともいわれています。
表門城明渡しの場
屋敷の明け渡しの後、いよいよ由良之助が仇討ちの決意を固める場面となり、屋敷が遠くなっていく様式も工夫されている様子がわかりました。万感の思いを胸に立ち去る由良之助。伴奏の三味線の音色も哀愁を奏でます。
道行旅路の花聟
満開の桜と菜の花が美しい場面。華やかな雰囲気に包まれます。その中を塩冶判官の家臣・早野勘平と顔世御前の腰元おかるが人目を憚りながらやってきます。
主君の判官の事件の際に、逢瀬を交わしていた二人。その罪を恥じて、おかるの実家の京・山崎を目指しています。
錦絵から出てきたような美しさの隼人さんと七之助さん。
そこへ、おかるに横恋慕する師直の家臣・鷺坂伴内が現れます。
伴内は巳之助さん。ピンクの裃から花四天のような格好に。立ち廻りもあります。
びっくりしたのが、巳之助さんがトンボを切ったこと。
他の演目でトンボを初めて見た時には、歌舞伎でこのようなアクロバティックな技があることに驚いたのですが、その時は若手のわりと小柄な方がやっていました。
巳之助さんのような有名な方も、トンボを切ることがあるのですね。
そして、伴内がいつもとは反対に幕を引いて、終演。
華やかな演目で、昼の部は終幕となりました。




