先週、大阪・十三のシアターセブンで舞台挨拶のある映画を観賞しました。
『アーバンクロウ』(橋本一郎監督 2023年)
この映画は東京のアパートの一室で、住人の女性が強姦され、偶然にやってきた父親が撲殺されるという悲惨な事件が発端になっています。
事件後、そのアパートでは刑事の赤井一郎が重要参考人である被害女性望月澪の監視にあたっていました。するとそこへ赤井の上司で激しいパワハラの来栖賢治がやってきます。
3人はそれぞれ葛藤を抱えていますが、徐々に過去について話だします。すると3人は単に偶然とは言えない複雑な関係性があることが判明します。そして事態は思いもかけない方向に展開します。3人はいったいどういう関係だったのでしょうか。
映画の一番中心的な舞台はアパートの一室。映画でありながら、まるで演劇でも見ているような緊迫感に包まれて進行します。決して笑いを誘うような場面はないのですが、最初から最後まで画面に釘付けになってしました。
映画の主題の一つがハラスメント。現代社会にはいろいろなハラスメントがありますが、この映画でも多様なハラスメントが登場します。我々も一面ではハラスメントの被害者であり、別の一面ではハラスメントする側であるかもしれません。現代社会の心の闇と生きることの苦痛を感じてしまいます。
また最近らしいことと思ったのは本作でも取り上げられたSNSの役割です。SNSではそれが事実であれ、事実ではないことであれ、瞬間に拡散してしまいます。虚実ないまぜの媒体とどう向き合うか、考えさせます。
現代社会は実に複雑ですね。互いに何の関係もないと思っていた相手が意外に濃密な関係のある人だったりします。出会う人はなんらかの縁のある人だと思った方がいいかも知れませんね。
上映後の舞台挨拶では、望月澪役の咲貴さん、赤井の知人の雑誌記者役の土屋士さんがリアルで、そしてZOOMで澪の母親役の小飯塚貴世江が登場というハイブリッドな舞台挨拶。短い時間でしたが、シリアスな映画ながら、撮影の楽しい様子が伝わってきました。またゆっくり見たい気分です。同じ題材で舞台にしても面白いのではないかと思いました。