今回は排気、特にマフラーについて。
 
マフラー(2ストだとチャンバー)は、カスタムの基本と言うか、一番手を付けやすく交換したのが一目で分かる
パーツですね。
 
マフラーを選ぶ際に重視するのは人によって様々ですが、大抵は外観・音量・音質と言ったところでしょう。
 
自分自身やはりそこが気になるし、似合うマフラー・カッコイイ音とこだわってしまいます。
 
もちろんそれでいいんです。
 
そんなマフラーの話を、今回はもう少し突っ込んでみたいと思います。
 
 
上記の様な理由のほかに、やはりエンジン特性や排気効率と言ったようにマフラーを交換する本当の意味の
追求ですね。
 
エンジンの工程の話は、第六弾の中で基本は触れましたね。エンジンは大きく分けて3つの部分に分かれます。
 
上からタペット周りを含むシリンダーヘッド。次にピストンが上下する部屋シリンダーブロック
 
そしてその上下運動を円運動に変換しているクランクシャフトがあるクランクケース
 
以前書いた燃焼室は、シリンダーブロック上部(ピストン上面)とシリンダーヘッドの間に出来る空間の
ことでした。
 
そして、エンジンか何工程で何回転の話はクランクの回転で表されているのでクランクケース部で起こっていることでした。
 
 
では本題です。シリンダーヘッド部で何が行われているかから始めましょう。
 
 
ここには構想が複雑なモノがひしめいています。その1つがタペット系です。
 
クラブマンのエンジンの弱いと言われている部分ですね。音が出たり、壊れたりとよく聞きます。
 
このタペットとは、給排気をつかさどるバルブ・ロッカアーム・カムシャフトなどと言った部分の総称です。
 
圧縮時にはこの弁(バルブ)は給排気共に閉じていて、燃焼室を密閉しています。
 
この密閉が悪いと圧縮漏れを起こして、俗に言う「圧縮が低い」とか「圧縮がない」と言ったことになります。
 
次に、燃焼してピストンが下がって、次上がって来る時に排気側のみが開き、ピストンの上昇とともに燃焼後の
ガスを排気します。
 
排気後ピストンの降下時に、ちょうど注射器のポンプ状態で燃焼室内が真空に近い状態になります。
 
これを負圧と言い、気圧が大気圧よりマイナス方向になります。
 
なので、その状態で吸入側の弁のみを開くと空気(混合気)が一気に吸い込まれ流れ込みます。
 
そして両方閉じてピストン上昇で圧縮・・・・とまぁこう言う仕組みになっている訳ですね。
 
 
ここからマフラーの話になります。
 
 
一般的にマフラーはよりストレートに、より口径を大きくすることで排気効率が上がると言うのは分かりますね。
 
しかし、太いと抜けすぎとか、排圧(背圧)がかからないとか聞いたことありませんか?
 
これは排気もただ抜けば良いってもんじゃないって話なんですね。
 
じゃあどうなのよ!? と言うことになりますが、排気量で違いが出るのは分かっていると思います。
 
排気効率でエンジン特性やフィーリングが変化する理由を少し説明しましょう。
 
まずは低回転時、トルクに関わる問題です。
 
よく「マフラー太すぎて排圧かかんないからトルクが細くなっちゃって・・・」
 
なんて会話聞きません? これってちょっと違います。
 
マフラーにつながる前に、エキマニやらフロントパイプやら、いくつか通る場所があります。
 
そして排気効率は、排気の流速と流量の関係で成り立っています。
 
つまり、太いと流量は多くなります。しかし流速は遅くなります。口でやればわかります。
 
「う」の口をして息を吹いてください。次に「お」の口で同じ強さで吹いてください。
 
速度と量の関係が分かりますよね?細い方が流量は少なく流速が早い。
 
 
まとめると、排気流量は馬力であり最大出力に関係が有ります。逆に排気流速はトルクに関係しています。
 
ピークパワーを求めるのであれば、太くストレートなパイプにこしたことはありません。
 
しかし流速が遅くなるため最大トルクが低下してしまいます。理論上パイプが細いとトルクが上がるというのは、
 
流量が減った分流速が上がったと言う馬力を抑えた結果の副産物であり、
 
トルクが太い方が待ち乗りもしやすく騒音も小さいと言う結果、メーカー出荷時は太いパイプを付けて来ません。
 
もちろんパワーを抑えると言う狙いがある車種もありますが。
 
これを踏まえてマフラー選びをすると、また違ったマフラーをチョイスする幅も増えるのではないかと思います。
 
 
余談ですが、2ストの場合はチャンバーと呼ぶマフラー部。上記の考え方が当てはまらない部分があります。
 
というのも、そもそもチャンバーとは「小部屋」「」と言った意味をさしていて、その名の通り見た目も
 
出口付近の消音部はマフラーと似たような格好ですが、バイクだとちょうどセンタースタンド付近の
 
腹下の部分は一度大きく膨らんでからまたしぼまっていますよね?
 
これが部屋の役割をしていて、排気脈動を起こして排気を逆流させたり、小部屋に閉じ込めたりする役割をしています。
 
なんで?抜けたほうが馬力出るんじゃなかった? そうなんです。しかし2ストは4ストと違い、
 
吸気と排気をバルブを使ったタペット機構を採用していません。
 
 
ポートと言われる穴が空いていて、ピストン上下と発生負圧によって吸気・排気・掃気を行っています。
 
つまり吸いながらも吐いているわけで、この間をオーバーラップとも言いますが掃気の時間があります。
 
掃気中は満足な圧縮がかからずにパワーを損失しています。これをどう補うのか。はい、チャンバーです。
 
 
意図的に排気脈動を作って、小部屋に排気を留まらせたり、あるいは逆流させることによって
 
排気ポートから排出しようとするガスを押さえ込みます。
 
これによって行き場をなくした排気がバルブ機構の代わりに圧縮を補助します。
 
なので2ストは4ストより排気抵抗や排気効率にエンジン特性やパワーバンドを左右されやすいエンジンなのです。
 
これは4ストにも言える事で、必ずしもと言う訳ではないですが、排気脈動は起こっていますから排気の流量多く
 
なれば流速が遅くなり、排気の流速が遅くなれば吸気の流速も落ちます。
 
すると燃料を吸う力も少なくなるのでキャブセッティングが薄い状態になることがあります。
 
 
ちょっと分かりにくい記事になってしまったかもしれませんが、参考になればと思います。