今回は点火について話しましょうか。
 

クラブマンは点火方式を「CDI」点火を採用しています。
 
CDIとは「キャパシター・ディスチャージド・イグニッション」の略なんですが、
 
容量の大きなコンデンサー(キャパシター)に電気を溜め込んで、(チャージして)回路を使って
 
チャージを止めたら放電(ディスチャージ)する方法です。 この頭文字の略ですね。
 
 
一次電圧の・・・とか、二次電圧が・・・とか、何か難しく言うと工学系の学生の講師みたいになるんでやめますね。
 
 
とにかくザックリと、一時的に電気を溜めておいて高電圧を一気に放出するんだなぁぐらいでいいんです。

その先にイグニッションコイルがあって、コード伝わってプラグに行き着いて、スパークプラグがバチッと
 
電気の力でスパークさせて圧縮混合気に点火!! と。
 
 
なので、この子が壊れたり機嫌が悪くて調子損ねると、テキメンに不具合です。
 
エンジン掛からない・ふけない・高回転まで行かない・・・ はっきり言って重症の症状です。
 
更に言うと、CDIは火を飛ばす司令塔と言う役目の他にもう一つ大切な役割を担っています。
 
それは何か。点火時期の進角もしています。
 
進角・遅角とはエンジンに点火するタイミングを、ピストンが圧縮上死点で0度としたとき、上死点前何度で
 
点火するかとか、ベストタイミングより何度ずらして点火するかと言ったタイミングのことを言います。
 
 
全てのタイプのエンジンに言える事ですがここでは分かりやすく、レシプロと言われる現在一般的な方式の
 
4サイクル(4スト)エンジンで軽く説明しましょう。
 
ではまず、エンジンについて。4サイクル4ストエンジンとよく言いますが、
 
 
本来は4ストローク・1サイクルエンジンの略称で、その意味は読んで字の如く
 
4つの工程1つの仕事を完了する。   と言う意味ですね。
 
 
4つの工程とは、吸入圧縮燃焼(爆発)排気です。これをワンセットで一つの仕事として行っています。
 
そして、最初の2工程(吸入・圧縮)でエンジンは1回転。ピストンの上下で言うと頂点スタートで、下がって吸入
 
一番下まで下りきってから、上がって圧縮。

残り2工程でまた1回転します。圧縮されたところに点火され、爆発の勢いで下げられます。
 
下まで行ききったら次は上がって来ながら燃えカスを排気します。
 
つまり、1つの仕事を1回転で2つの作業し、計2回転して4つの作業を行い1つの仕事として完了とします。
 
 
お気付きですか?2回転のうち1回転は爆発のときに下げられた力を利用して、ただ惰性のみ回ってます。
 
2気筒だと1つ目が惰性の時にもう1つ(2つ目)は爆発で力をもらって、2つ目が惰性の時は1つ目にもらって。
 
2気筒をつなげて考えれば惰性のみの1回転の時間はありませんよね?
 
 
しかし!単気筒のクラブマンの場合、エンジン2回転に1回転は惰性のみで回っていることになります。
 
だから調子崩すと症状はすぐに現れ、重症状態になってしまいます。
 
 
で、吸入でピストンか下がって圧縮するのにピストンは上がってくるんですが、上がりきった最高地点
 
圧縮上死点といいます。
 
 
この上死点に来た瞬間に点火するのが一番いいんですよね、理論上爆発エネルギーのみを考えれば本当は。
 
一番圧縮されてる訳だからパワーも最高値だし、爆発したら下がるだけだから摩擦等の機械的なパワーの
 
損失意外はないですからね。
 
 
しかし、圧縮された混合気に点火してから、燃焼室の端っこ全体まで燃え広がるのにほんの一瞬時間が
 
かかります。人間の目では確認できないほどの速さですが、スロー再生するとプラグの先から順番に
 
燃えていって最後の壁まで到達するのが見えるんですからエンジンにとっては一瞬じゃないんでしょうね。
 
 
この燃え広がりの速度を火炎伝播速度と言って、火が付いてから全体に燃え広がる時間だったり、
 
燃え広がり方にも各社各メーカーこだわっています。
 
クラブマンの燃焼室形状は特に効率重視で設計されたエンジンですね。ここでは詳しく言いませんが。
 
 
で、燃え広がるまで時間がかかっていては下にさがりながら燃えるので、今度は圧縮が弱くなっていってる
 
状態なのに、頑張って燃えるから結局パワーはロスします。
 
そこで、燃え広がるための点火のタイミングをちょっと早くすれば、ほぼ最高点到達で完全に燃え広がるんじゃ
 
ないのかい!! と言う発想ですね。
 
 
しかし、いま圧縮の為に上がってきているピストンを、燃え始めでまだ力は弱いにしろ押し戻そうとする力を
 
加える結果になってしまいます。
 
だから極端に早く点火したら逆回転させようとする力が加わりますね。これがノッキング現象が起こるの原因の
 
1つでもあります。だからノッキングしないし損失が最小限になるように、その辺をちょうどいいところにしよう!
 
ってのが進角の角度の考え方なんです。
 
 
がしかし、ここまでの理屈だと一定の回転数でならちょうどいいところに固定してしまえばいいですよね。
 
でも低回転から高回転まで使用領域があるエンジンでどうしたらいいだろう・・・
 
CDI それもやってくれているんですね。なんてこの子はがんばり屋さんでえらい子なんでしょう。
 
 
回転数が高く(回転が速く)なればなるほど点火のタイミングを早くしないと間に合わないし、早いままでは
 
回転が落ちたら今度は遅らせなければならないし・・・と、日々頑張ってくれています。
 
 
チューニングエンジンになるほどこの点火時期は非常にシビアなものになってきますし、セッティング次第で
 
エンジン壊れますからね。
 
 
んで、この部品。見た目で正常か壊れているかの判断はほぼ不可能。テスターあてようにも普通は無理だし、
 
クラブマンはタイミングライトあてて、タイミング見ることが出来ない構造なんで無理。
 
 
他の原因を潰していって、これしかないと思ったら手をつけるようにするか、逆に消耗品と思って先に交換しちゃうか。選択するのは人それぞれ。
 
 
本来は消耗品ではないんですが、やはり年数劣化・振動・浸水・腐食等でダメになることも無くはない
 
部分ですので、たまに不具合の原因で出てくるパーツですね。
 
 
細かいことを気にしないんであれば、カプラー口さえ合えばただの電気回路の箱なんで使えるんですよね。
 
もちろんちょっとタイミングが違うとか、厳密に言えば変わっちゃうんですけど、よっぽどじゃない限りは他車種や
 
汎用品なんかでも使えたりします。
 
 
まぁ社外のカスタムCDIなんかが出ている車種もありますからね。特にスクーターはみんなリミッター解除の
 
効果を狙ってCDI交換しますよね。
 
 
それと、点火ばかり気にしても、バルブの開閉時間だったりや開閉タイミングでもエンジン特性は変わります。
 
バルブのタイミングはカムシャフトが掌っているんで、カムのリフト量を・・・これはやめましょう。
 
コアなメカチューンの話に突入するパターンです。
 
 
今回のはあまり分かりづらいと言うか、馴染みの浅い話題だったかも知れませんね。
 
エンジンに不具合が出たときに、「あれっ?これだけ見ても原因特定できないってなんだろう・・ 
あっ!CDIは?」
 
ぐらいの勢いで頭の隅にでも置いておいてくれれば幸いです。
 
 
次回は・・・ マジでどうしよう