花と画家 谷川俊太郎


花は生きている

散るまでの時を

美しさを誇れるでもなく

萎れるのを嘆くでもなく

穏やかに

この星をめぐる

大気に身を委ねて


画家は

花を見つめる

血が透けているような

花びらを

微笑する雄蕊・雌蕊を

秘められた

蜜に焦がれて


だが画家は

花を描かない

自分の魂のねじれと

揺らぎと

混沌を

黙って色に変え線に変え

花に語りかける


画家は花と

競わない

ただ花のように生きて

花のように

散りたいと

つつましく

願うだけ