「チョン・ユノさんとまさか一緒の隊になるとは、偶然とはいえ光栄です」

「こちらこそ、世間知らずで申し訳ないが、よろしくお願いします」

芸能人という仕事柄のせいか、毎日代わる代わる声がかかる。慣れてはいるが、やはりどこに行っても変わらないんだなと、慣れない環境もあってか、少々辟易していた。

ストレスと高カロリー食のおかげで太る一方だし、逃げ場のないやり切れなさに、叫んで飛び出したい一歩手前だった。

「ユノ、聞いたか?入隊初の大イベント参加だよ」

「ああ、上官にちらっと聞いたけど…ケリョン市での地上軍フェスティバルだろ?」

「さすがだよな〜ユノは司会進行だよ。大抜擢」

正直、まだ慣れない軍生活での大仕事は、しばらく先延ばしにしてほしかった。
けど選ばれたからには責任を持って取り組みたいし、これだから芸能人は甘いなんて思われたくないのが一番だった。そう、半分は俺の意地。
ジェジュンを含め、皆、それぞれの赴任地で頑張ってるんだ。俺だって、頑張らなきゃ。

「そういや、フェスティバルには55師団も参加予定だよ。確か、そこには、お前の仲間がいたよな。ほら、キム…」

「ジェジュン‼︎」



ジェジュン、わかるか?

俺、この時お前の名前を聞いた時、

グレーに見えてたすべての景色が、

一瞬で鮮やかな天然色に変わったんだ。


今さら気づいたよ。
やっぱり、俺にはお前が必要だ。

必要なんだ。

早く、会いたい。

俺の最愛の人。










「ユノ、見て見て、俺の姪っ子ちゃんの写真!
いっぱい撮ってきちゃった〜♡」

スマホのカメラにこれでもかというほど、撮られた産まれたての赤ちゃんの写真。あるかないかの薄さの髪の毛はしっとり濡れて、小さな手と足は、まるで作りもののよう。かわいい、それは、かわいい、赤ちゃんだった。

「一緒懸命、泣いてる」

「でしょ?姉さん、10時間くらい苦しんでさー、ほんと、大変そうだった!産まれた後、思わず姉さんに抱きついちゃったよー!」

嬉しそうに、いつまでもスマホから目を離さないジェジュン。そんなお前を見て、たまらなく愛おしく感じるけど、俺の心の中は、ちくちくどこからか痛みだして、今すぐここから離れたくなっちゃったんだ。

「ジェジュンは、子ども…欲しい?」

「うん、そりゃね。こんなかわいい子見ちゃうと、欲しくなる!」

何気なく言ったつもりだと思う。深い意味もないんだと。けど俺は、それからジェジュンとまともに話せなくなった。

ジェジュンは、戸惑い、困惑し、落胆した。

長い時間をかけて、あんなに激しく愛しあったのに、まるで何もなかったみたいに、今はお互いの存在が薄くなってしまった。

仕事も、プライベートも離れ離れになり、たまのメールも素っ気ないもの。

そして、兵役。

ああ、これで、俺達、本当に終わりだ。

そう思った。



「お兄ちゃん、今日はほんとにありがとう。
忙しいときに式を挙げることになっちゃってごめんね」

「なんだよジヘ、めでたい日に謝ることないだろ。むしろ兵役中でよかった。仕事だったら韓国にいなかったかもしれないんだから」

今日は俺の妹、ジヘの結婚式。俺にとっても義弟という新しい家族が出来た日。義弟くんは、真面目で誠実な男。この人なら安心してジヘを任せられる、と俺も両親も2人が付き合い始めた頃から何の不安もなかった。ただどうしても誓いのくちづけは見ることは出来なかったけど…。

「ジヘ、お客様にご挨拶は?」

「そうね、お兄ちゃん、また後でね」

純白のウエディングドレスを翻し、ジヘは
俺から立ち去る。ジヘの後ろ姿を見送りなが、旅立つ妹を誇らしく思う反面、引き止めたくなるような、複雑な気持ち…。こんな日は、あいつに側にいてもらいたかったなあ…。

「センチメンタルな気持ちってところですか〜?」

「ふん、お前だってそのうちわかるさ。妹が2人だから、倍の寂しさだぞ」

「僕も妹たちもドライだから。あんまり想像出来ません」

同じく兵役中のチャンミンとシウォンも一緒に参列してくれた。同じ兵役と言っても、2人は義務警察だから、普段は会うことは出来ない。久しぶりの再会に話したいことは沢山あるけれど、2人は俺に家族との時間を優先するように、と周りの招待客の相手をかって出てくれた。

愛する妹の結婚式に大切な家族、信頼のおける仲間たちに囲まれ、何の申し分もないはずなのに…

俺は、何かが欠けていると、ずっと感じている。

だって、ここには、一番側にいて欲しい、俺の愛する人がいないから…。