OPERA NOVELLAという団体の第四回公演
主催は(交財)座間市スポーツ・文化振興財団
ハーモニーホール座間オペラワークショップメンバー参加、とありますから市民オペラなのかも知れません。
座間ってどこ?ですが、神奈川県の中央です。以前(2012.6.10)、市民オペラの「カルメン」をやった綾瀬市のそば。どちらも、駅から遠い市役所のそばにとても立派なホールが建てられていてびっくりするような場所です。
ローカルな、地域の催しですが、綾瀬市のカルメン同様、こちらの蝶々夫人も素晴らしかった。
日本のプロの団体のオペラがことごとく面白くないのと対照的です。
なぜかな、と思うに、プロの団体のオペラって、出演者たちから「これは仕事」という雰囲気が漂っているからだと感じる。出演者どうしはけっして仲が良い訳ではない、対抗意識もある、そのうえ「誰の為に演じ歌唱しているか」というのが「観客のために」ではなく「自分の稼ぎやキャリアのため」であり、「仲間と共に作り上げている」という情熱が感じられないのがプロ団体の公演の特徴と思います。(はっきり言うと東京二期会の事です)
市民オペラはそこが決定的に違う。作品への奉仕と情熱が違う。上演する喜び、というものが感じられる。
この公演は素晴らしかったです。招待券をたくさん配っているらしく、只同然で譲ってもらいました。申し訳ありません。
西本真子さんを初めて聴きました(蝶々夫人役)が、素晴らしいです。二期会の人じゃないんですね。最後まで豊かな声量と心を打つ演技で、最後の子どもと別れるときのアリア「名誉を守ることができない者は名誉のために死ぬ」は涙出ました。この人の歌唱は他の男性歌手の声量を圧倒しています。着物姿で一幕から汗びっしょりで、大変だろうに最後まで勢いが衰えませんでした。素晴らしいです。
蝶々夫人と二重唱をしたスズキ役の二瓶純子さんも声質が西本真子さんに似ている美しい声で二人のデュエットは特に良かった。この人も二期会の人ではないんですね。
合唱団はそれぞれ多分自前の素敵な着物を着ていて、これは自主参加の市民オペラならではだろうと思いました。(あんなに沢山の衣装を揃えるのはお金がかかります)着物姿も美しいですが、やはり「蝶々夫人」は日本人で演じてもらいたい演目だなぁ、と改めて思いました。
蝶々夫人で私が気になるのは「ケイト」の存在です。
ケイトは結婚三年未満の夫に隠し子がいたわけで、それは蝶々夫人に勝るとも劣らない悲劇のヒロインなはずです。しかし、どの演出を観てもケイトは端役扱いで歌も短い。その内面表現がなされないまま蝶々夫人の産んだ子どもを引き取って育てるという申し出をするのです。
この気持ちが理解できない。
日本人だったらそんなこと言うだろうか?
ピンカートンとは「即離婚」ではないだろうか?
ケート役の歌手はケートの気持ちを理解して舞台に立っている筈。
以前、ケート役のメゾソプラノの人にこのことを訊いてみた事があります。
こう答えました。
「役についてお話しする事は何もありません。」
「『私が何を考え解釈して舞台に立ったか』は聞いたり・読んだりすることではないと考えます。
私はそのために舞台に立つのですから必要ないと思います。分かる人もいるだろうし、分からない人は忘れるのです。」
・・・言葉を失いました(笑)
同じ事をマリア・カラスが言っていた事をのちになって知りました。

