主人は、映画で見た国税局の査察官のごとく、金庫の中の乱雑な書類を瞬く間に仕分けする。

現金や年金手帳は入っていない。

驚くのは、金庫だけでなく机の引き出しや鏡台の上なども合わせると、銀行の通帳が約50冊!

しかも生きている口座なのかすら分からない。今は存在しない、古い銀行名の通帳もある。

残高は中途半端にあるから厄介だ。

推察するに、通帳をなくしたと思い再発行してもらっている口座も多々あるはず。


ハンコも百均で売っているような三文判が一掴みくらいあった。どれをどこの銀行の届出印にしているか照合するのは、トランプの神経衰弱だわ。


これは母が亡くなったあと遺産相続が大変だと主人は頭を抱える。


とりあえず年金の振込口座とキャッシュカード(暗証番号はカードの裏にマジックで書いてある!)は早々に見つけられたので、これで施設の入居代は払える。あとはクレジットカードの引き落とし口座が分かったので、そこにあるお金で公共料金の引き落としは、しばらくもちそうだ。


主人は「とりあえずこの(50冊の)通帳は私が預かってATMコーナーで通帳記入してみます。都市銀行は出来るけれど、地方銀行のはこちらに来た時に少しずつ記入します」

「お金はしばらく持ちそうですが、お兄さんの自分の食費や支出に関してはきちんと働いてください」

「お義母さんの貯めたお金はお義母さんの病院代に当てるべきです」


綺麗好きの主人はこの部屋のあちこちに雑然と散らばっている重要物や貴重品に、最初は呆れびっくりしていたが、最後はややキレ気味だ。


兄がお金を探し出して遊興費に当てているかもと考えたが、この様子ではないらしい。なんでも母にやってもらっていた馬鹿な兄は、お金を探すのも誰か(妹夫婦!)にやってもらわないと出来ないのだ。


母の病状に緊急性は無いので三ヶ月に一回くらいの割合で来ることにすると兄に告げる。

交通費もバカにならない。


一人で生活出来るかと私が聞くと

「大丈夫ですよ。俺ずっと一人でやってきたんだぜ。〇さんも無理しないでよ」

だってさ。


ニヤニヤして、どこかへイッテしまっている目付き。背筋が寒くなってゾッとする。

町でこんな人に会ったら絶対目合わせてはいけない。


本当に兄が気味が悪い。


放ったらかしの母の携帯を見つけた。もう母は携帯を使えないし、もったいないから解約した方がいいと兄に言っておいた。


帰りは駅まで送ろうかと兄に言われたが、兄といるのがたまらなく気持ち悪かったので駅までまた20~30分歩いた。

主人は疲れ果てていたので車で送って欲しそうだったので、次来た時は送ってもらおうと言った。



その歩いて帰る帰り道、主人は

「もう絶対に一人で兄に会ってはいけない」

「120キロの体型も驚いたけど前より気味が悪いし、なんであんなにいつもニヤニヤしてギラギラしてるの」

「絶対に実家に行く時は俺と一緒に行くように」

と言った。


ああ、私だけでないんだ、そう思うの


何だかホッとした。