「どこに住んでるんですか?」
「えーっと……ここまで徒歩5分です」
「わー、私は電車で一時間なんですよー」
「……遠いですね」
島崎さんはちらちらと私と目線を合わせながら私と話している。そんなミステリアスな、不思議な島崎さんを知りたくなって、私はたくさん質問していた。
島崎さんをよく見ると、かなりの美形だった。でも、あまりまとめられていない髪に隠れてそれが見えない。しかも、目線が下を向いているから尚更。
「島崎さん」
「なんですか?」
島崎さんは顔を上げて首を傾げた。
私は思ったことを率直に口に出した。
「可愛いですね」
私の言葉に顔が赤くなった島崎さんは、えくぼを私に見せた。無意識のうちに私は島崎さんに惹かれていたのか、私も一緒に微笑んだ。
島崎さんは小さく私に感謝の言葉を述べると、前に向き直った。先生が来たのだ。
いよいよ入学式だと思うと、なんだか気分が高揚してくる。
「出席番号順に体育館に入場だ。席は俺が指示するから。じゃあ、廊下に出席番号順に並べ」
先生の指示通り、廊下に出ると、ものすごく寒かった。暦の上では春で桜も咲いてるのだけれど、まだまだ冬に感じる。桜のピンク色を見れば少しでも暖かく感じるかもしれない。
私の番号は2番。「い」だから早いのだ。確か前の人は「青野」さんだっかな? まぁ、そんなことはどうでもいいか。
先生の後に続いて、体育館についた。
中から吹奏楽部の厳かな演奏が聞こえ、保護者の圧力も感じる。私は制服の襟を正し、深呼吸した。湧いてくる好奇心を抑える。
そして、拍手が大きくなった。
前の人に続いて、私は一歩踏み出した。
保護者の暖かい視線に見守られ、歩く。こぼれてくる笑みを引き締め、この場にふさわしい表情をする。それでもにやけてしまうのは性か。
そんな顔を見せまいと、遠目で吹奏楽部を見ると、台に立ち、棒を振る見覚えのある背中が見えた。
