唖然とした表情の二人の前で、曹田は台湾ラーメンを食いおさめた。
底に澱のように溜まったビールを、口を洗うようにして流し込んだ。
そして曹田は、笑った。
「俺はこの乱世に志を立てた。それが今だ。これは今のように国が乱れる予兆があった時から思っていたことでもある。今、それを口にした。口にしたら、案外簡単なことだったわ」
そして曹田は少し視線をテーブルに落とし、すぐに二人を見つめた。
「夏木、夏目。俺は立つ」
そう叫び、曹田はゆっくりと席を立つと、そのまま店を出ていった。
食い散らかしたデーブルには、夏木と夏目、それにレシートが置き去りにされた。
「何やら嵐が通り過ぎたような」
「荒らしどころじゃないわ。とてつもないもんを置いて行ったぞ」
「レシートか」
「そんなもんじゃないわ。いや、それもとてつもなく不快なもんではあるが。とにかくどうするよ、夏目」
夏目はしばし沈黙していたが、やがてこう呟いた。
「俺は、心が震えたわ」
夏木は、その言葉を聞くと、不意に口元を歪めた。笑っていた。
「俺は、体に血が巡ったような気がする」
二人は、曹田が呑み残した紹興酒の瓶を取り上げた。しばし無言で杯を傾けている。
その様子は、相変わらず騒々しいこの食堂の中でも、不思議な輝きを放っているようだった。
奇妙に穏やかな表情を浮かべて杯を空けた夏木は、レシートを手にとり、ゆっくりと立ち上がってこう言った。
「賭けるか。あの男に」
夏目は笑った。
「賭けるか。あの滅茶苦茶な男の志に。俺らの運命を」
宿命の星が今夜、男達に、降った。