東大寺大仏殿は極彩色 『日本の国宝、最初はこんな色だった』 | 釈迦牟尼スーパースター ~仏教のつれづれ~

東大寺大仏殿は極彩色 『日本の国宝、最初はこんな色だった』

釈迦むに・スーパースター ~仏教のつれづれ~-国宝の色 仏像に関する本もたくさんありまして、

だんだん飽きてくるものですが、
この本はかなり新鮮なアプローチで、飛びついてしまいました。
『日本の国宝、最初はこんな色だった』。


奈良時代のお寺などに行くと、お堂も柱もすすけていて、
「シブいね~。やっぱり”わびさび”は日本の心だね~」などと
思ってしまう人もいるでしょうが、それは完璧な勘違いです。


そのお寺はできたころ、柱は朱色で、
ご本尊は金色に輝き、脇侍は極彩色だったかもしれません。

それを作った天皇や貴族は、
「うわあ、キラキラしてまばゆいばかりだ。
やっぱり最新モードの中国・インドから来た仏教はイケてるなあ。
仏の国はこんなところなんだろうなあ」と思ったことでしょう。


この本の著者・小林泰三氏は、大日本印刷に勤務する人で、
日本美術をCGでデジタル復元する技術を持っています。
現在に残る”すすけた”仏像や絵巻に、わずかに残った色彩をもとに、
「つくられた当時はどんな色だったか」を復元するのです


この本では、修学旅行スポット「東大寺大仏殿」や、
平安時代の「地獄草子」から、狩野派の「花下遊楽図屏風」まで、
コンピュータ上で”もとの姿”に復元したカラー図版が見られます。


たとえば東大寺大仏殿の、めくるめく色彩世界!
あの巨大な盧舎那仏と脇侍には金箔が貼り付けられて、
黄金に輝いています。

三尊を守る四天王は、朱や青や緑や、細い金箔模様に彩られた
あっと驚くド派手な原色責め。
さらに、お堂の天井や梁や柱も、群青のグラデーションに、
ところせましと仏像や飛天が描かれています。

これはもう、本に載ってるカラー図版を見てもらうしかありません。


752年、この大仏殿で、インドから来た僧・盧舎那と聖武天皇が
大仏に目を書き入れた(大仏開眼)というのですから、
そこに居合わせた人たちの歓喜たるや、まさに蓮華蔵世界だったでしょう。
著者は、「復元はあくまで仮説であり、正しいとは限らない」と書いていますが、
これに近い色彩洪水だったのは間違いないでしょう。


天皇がやったのなら、これも一種の公共事業ですよね。
高速道路やダムではなくて、このぐらいトンデモない公共事業を
やってほしいものです。まあ、実際やられたら頭にくるでしょうが。


しかし、こういったものを復元する小林泰三さんのお仕事は、
どんなにか面白いだろうか。
と思うのは素人考えで、こういった画像処理は死ぬほど時間がかかるし、
想像を絶する大変なお仕事なのではと想像します。


( 『日本の国宝、最初はこんな色だった』 光文社新書 2008年 小林泰三著)