「私達だけの道」(龍也X春)


またやってしまいました。
軽い。
軽い…ミス。
誰にも迷惑はかけなかったから。

ちゃんと今回は報告。
相談をしていたから、
怒ったり。
注意を受ける事はなかったのですが…。

でも。
一番好きな人の時間を奪って…。

私で良いと。
私が良いと。
言ってくれたのに。

少しずつ進んで行けたら。
毎日。
メモを取って。
寝る前に仕事の確認。
予習復習のような事をしているけれど。

私が居る事で、
少しでも、
自分の時間を作って欲しいと思っていたのに…。
上手くいかない。


鋭い視線の中の温かさ。
それを知ってしまってから、
思いは止まらなかった。
そして。
私が傍に居て良いと。
選んでくれたのに…。


「どうした?」
「あ。何でもないです」
「それが、何でもないって顔か?」
「…ぅっ」
「ああっ。泣くなって」
「ごめっ」
「今日の事か?もう終わっただろう。
小さなミスは明日の糧だ。
そう言った筈だ」
「ひっくっ」
「仕方ねぇな」
「ごめんなさ…」
「謝らなくて良い」


先生は、ぎゅっっと
後ろから抱き締めてくれた。
でも。
それだけでは…
足りない。


「先生っ」
「ん?足りないのか?」
「…はい」
「ったく。我侭だな。
勝手にいじけて。甘えて」
「…っ」
「構わねぇ。お前のそう言う所。
嫌いじゃない」
「ありがとうございます」


大人な人。
いつでも、私の暴走をゆっくりと見守り
抱き締めてくれる。
時には…叱ってもくれる。


「頑張りますね」
「ああ。お前の頑張りは知ってるからな」
「はい」


そっと。
腕を逞しい体に回す。
回転した私の体は、抱き上げられ…
二人の秘密の空間へと…。


絶対に。
この人の傍で、
前に進みたい。
音を奏で。
歌を聴きながら……。