街を見下ろす高台に、
ひとつの公園がある。
名を、瀬瀑(トルコ語でシェラーレ)という。

すべてが見えるわけじゃない。
でも、ここから見える街は、
俺のすべてを映していた。

母と義父に手を引かれて、
小学生の俺はこの坂を登った。
後には、叔母と従兄弟たちと笑いながら。
お茶を持ってきて、芝生でレスリングして、
日常が、宝物のように並んでいた。

高校の頃には、
沈む夕日を追ってカメラを持った。
この街で一番美しい夕焼けは、
いつだってここから見える。

理由が違っても、
この景色はいつも俺を捕まえた。
疲れた身体に、
「よく来たな」と語りかけるように。

たまには、俺たちは裏の森道を使った。
急で足元も悪いけど、
その険しさが、なぜか俺にはしっくりきた。
仲間内では「ウィッチャーの道」と呼んでいた。
誰かの物語の中の冒険みたいに。

最後にここへ一人で来たのは、
兵役に行く直前だった。
寒く、風が強い日だった。
でも、そんな日ほど心が澄んで、
俺は街に向かって静かに誓った。

「帰ってくる時、
 俺はきっと変わっている。」

そして今日、
その“次”の時が来た。

夕陽を背に、同じベンチに座る俺がいる。
汗ばんだ額、吹き抜ける風。
相変わらず、この場所は俺の“逃げ場所”だ。

ここで息を整え、
ここで荷を降ろす。
心の重さを、街に散らして、
自分を軽くしていく。

母さん、
ここを離れたい。
でもこの場所は、俺の心の中でずっと生き続ける。

最後の一息をするその日まで、
俺はきっと、またここに戻ってくるだろう。
この丘は俺の人生の座標だ。
俺の痛みも、喜びも、
全てここで風になった。

そして今夜、またひとつ。
沈む太陽と街と俺との間に、
誰にも聞こえない約束が交わされた。
それはきっと、
風の音に混じって、
夕陽の耳にまで届いただろう。