さて、前回の続きから。
ナンパ船「エスポワール」に乗った俺らは
一流ナンパ師の指導のもと、
ナンパを繰り広げたのであった。
持ち時間は2時間。
もう既に1時間、終了している。
残り1時間で勝ち組になれるのか。
焦る。
ピッチを上げる。
しかし反応が悪い。
そうこうしているうちに、
5分・・10分・・と時間が過ぎていく。
残り30分。
ドンドン周りではカップリングが成立している。
羨ましい、悔しい・・
このままでは、負け組・・
それだけは、嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ。
しかし時間というのは残酷だ。
ドンドン時間が進む。
時間が進むに連れて、
余っている女の子が少なくなる。
それのせいなのか、
次第に相方のモチベーションが
落ちていった。
そして・・・
相方はとうとう口にしてはいけない
その一言を言い出したのだ。
相方「・・・俺、成功するビジョンが見えないんすけど」
グッ・・・ グッ・・・
所為、俺も相方もモテまくりのヤリまくりなら
そもそも、こんな場所に来てナンパなどしない。
気持ちが痛いくらいよく分かる。
きっとコイツも俺と同じ、非リア充。
多分、高校と大学を泥臭く、
男臭い青春時代を
過ごしたに違いない。
それか、キョロ充か陰キャだったに違いない。
日の当たらない場所で育ち
女とは無縁の生活だったに違いない。
そしてキャンパスライフを過ごすことなく
そのままメーカーの営業に就職して、
普段はオッサンにペコペコ頭を下げる毎日。
自尊心も傷つき、ナンパも上手くいかず
彼の心はまるでイカロスの翼のように
折れているのであろう。
ただ思っていても、それだけは・・・
その言葉だけは・・・
言っちゃなんねぇんだ!!
でも俺にそんな偉そうなセリフを
言う資格はなかったのだ。
その時だ。
そんな相方にとどめを刺すかのように
流星さんが熱血指導をしてくれたのだ。
流星さん「いいか。前向きなバカならまだ可能性はあるが 後ろ向きなバカは可能性すらゼロ……… 言い切ってやらあっ………!おまえは100%成功しないタイプ……!」
※流星さんは本当はこんなこと言ってませんのでご心配なく(笑)ものすごく優しい人です。
グッ・・・・グッ・・・・
耳が痛い。
さらにまくし立てる。
流星さん「おまえの毎日って今 ゴミって感じだろ・・・・?
無気力で自堕落で非生産 だろ・・・・・・?
どうしておまえが今 そうなのかわかるか・・・・・・?教えてやる
女を掴んでないからだ・・・・・・!
ああ・・・・・・
女を掴んでないから毎日がリアルじゃねえんだよ
頭にカスミがかかってんだ。
バスケットボールのゴールは適当な高さにあるから
みんなシュートの練習をするんだぜ
あれが百メートル上空にあってみろ。
誰もボールを投げようともしねえ。
今のおまえがそうだ・・・・!
届かないゴールにうんざりしてるんだ。
毎日・・・・いろいろな女を「見」はするだろうが
全部ショーウインドーの向こう側だ
おまえには届かない・・・・
その抱けないストレスが
おまえから覇気を吸い取る
真っ直ぐな気持ちを殺していく」
・・・・
俺と相方の目には大粒の涙が溜まっていた。
嫉妬、怒り、苦しみ、喜び、悲しみ・・
様々な感情が入り乱れていた。
ただ、女にモテたい。ヤりたいってことが
これほど辛く苦しいものなのか。
まさに俺たちは氷山にぶつかった
タイタニックのように、沈むしかなかったのだ。
しかし、流星さんはナンパも一流ながら
奮い立たせるのも一流であった。
流星さん「いいか。今回のクルーズはまだ30分ある。
オレは何度も諦めずナンパすれば10人、20人抱けると
言ってるのに、お前はそっちには関心を示さない・・・
つまり負け癖が染み付いている証拠
このクルーズはそんなおまえの負け癖を一掃する
いいチャンスだ
勝てっ お前らっ・・・・!勝って女を掴め・・・・!人生を変えろっ・・・・!」
この言葉に火がついた。
ラスト30分。
手当たり次第に声を変える。
勝負は手出した可能性の回数。
俺たちの目に一点の曇りもなかった。
女をゲットしたい。ポケモンGOなんてリアルじゃない。
オレはリアルな女をゲットしたい。
ピカチュウだって、カイリュウだって
ヤドランだって、ピジョンだっていらねぇ!
ただ、ただ、女が欲しい。
ドンドンと声をかけた。
しかし、そんな俺達に冷たい現実が待っていた。
既に、余っている女がいない。
声をかけても、やる気がなさそうなばかりだ。
反応も悪い。
刻一刻と時間だけが過ぎる。
ボーーーーーー
船の汽笛の音、ゆっくりとただ、ただ静かに船は止まった。
つまり終わりのサイン。
気づけば、2時間が終わっていた。
あっという間だった。
立ちすくみ、力が入らず、
今にも膝から崩れ落ちそうだった。
・・なんてことだ。
相方は死にそうな顔をしていた。
負けたんだ。
俺たちは負けたんだ。
オレは野球をやったことがないが、
今なら甲子園球児の気持ちが1ミリだけ分かる。
そんな気がした。
なぜ、彼らが砂を持ち帰るのか。
認めたくないからだ。
俺達が負けた。これだけやってきたんだ。
本当に終わるのか。
俺たちが手にしたものは・・
しかし、その中でも諦めてない男が
一人だけいた。
最強ナンパ師、流星さんだ。
流星さん「おい糞ドモ、てめぇらは確かに負けたよ。
でもまだチャンスはある。
船を降りたら、ドンドン声掛けしていけ!」
そう、ナンパ船では確かにカップリングできなかった。
しかし、まだ、もしかしたら1%だけ可能性があるかもしれない。
そこにかけるのだ。
つまり、下船後のナンパ。
船を降りて、余っている二人組に
とにかく船ネタで声をかける。
「●●がキレイでしたねー見ました?」
「あれ、さっき船のってませんでした?」
「オッパイ見えてますよ」
とにかく声をかけまくる。
駄目だ。
止まってくれないし、
そんなに人がいない。
相方はかなり落ち込んでいた。
しかし俺の気持ちは彼とは違っていた。
俺は成功だと思ったのだ。
なぜならナンパをしたことがない人間が
初めてナンパをした。
声をかけれた。ちょっとだけ話ができた。
これだけで成功だ。
それでいい。焦らなくていい。
一歩一歩進めばいい。
俺はやり遂げた感があった。
あとは、残りのメンバーがどうなっているかなど
状況を確認して解散か。
そう思った。
ちなみに、一流ナンパ師の2人を除いて
俺ら4人中、1人はきちんとお持ち帰りしていたようだ。
勝ち組と負け組がキレイに別れた。
弱肉強食の世界、
弱いものは淘汰され
強いものだけが生き残る。
勝負とはなんてシビアな世界だ。
ボーッとつったていると、
流星さんに呼ばれた。
なんだ?と思って行ってみたら・・
何と、女の子2人を足止めしているじゃないか。
なんて日だ・・・!
しかし俺はいまいち状況が分からなかった。
ただ、何故か運がいいことに
その女の子2人と、俺と、別のナンパ師さんと
このまま飲みに行くことになった。
まさに棚からぼたもち。
訳がわからないまま、タクシーにのりこみ
新橋の居酒屋に向かうことになったのだ・・。
次回、まさかの奇跡が?!
このままワンちゃんあるのか?
続く。