空港にて
夏の観光シーズンが終わり、成田空港はガラガラで、セキュリティチェックも出国審査も数分で終わってしまった。空調完備のターミナルにも秋風が吹いている。搭乗時刻の5時05分までまだ一時間以上あったので、ゲート内の改造社書店で立ち読み。これ以上本を買ったら、遊びに行ってるんだか本を運んでるんだかわからなくなってしまうので、一冊たりとも買わないぞ、と強く誓う。今日は講談社の社運をかけた男性誌、「KING」の発売日。早速手にとってみたけど、これは誰に向けた雑誌なんだろう。記事はまとまってもとんがってもないし、広告はハイブロウ過ぎて役に立たない。女性誌をそのまま男向けにした感じだけど、俺には関係ない雑誌だな。ご祝儀でも買う気が起きない。
それより、ワールドフォトプレスから出ている「トムソーヤマガジン」のほうがよっぽど面白い。冒頭に書店界の有名人(千葉・ときわ書房の茶木さんとか盛岡・さわや書店の伊藤さんとか)がお勧めの本を紹介しているのだが、トップに掲載された青山ブックセンター間室さんの「ままならない恋に関する二十冊」が実にいい。川上弘美『センセイの鞄』は薦めてくれる人が多かったので読んだが、そこそこの小説という感想しか持てなかった。でも、この間室さんの書評を読んだら「なるほどそうだったのか!」と自分の浅い読みが恥ずかしくなった。手元にその雑誌がない(心を鬼にして買わなかった)のでこれ以上詳しくかけないが、気になる人は近くの書店へゴーです。
…やっと残り30分になった。もうイッチョ立ち読みして、それからNYケネディ空港へ向かいます。
ニューヨーク読本1・2、ニューヨーク物語
- 日本ペンクラブ, 常盤 新平
- ニューヨーク読本〈1〉ニューヨークを知る
今はなき福武文庫から3巻本として出ていた、ニューヨークにまつわるアンソロジー集。この第一集は城山三郎、池島新平らジャーナリストの見たニューヨークがテーマになっている。中でもルポとして出来がずば抜けているのは、立花隆の「ニューヨーク’81」。
ニューヨークには世界一大きなゴミ捨て場があるという。そこで働く清掃局員の多くは、白人の中流層だ。そこに政府の失業者対策で雇われた若い黒人がやってくる。
その黒人の青年は、こうして皆から徹底的に白眼視されている。…そしてある日、彼は皆の言うようにストリートに舞い戻らざるを得ないだろう。…その結果、ミドルが怒る”税金で喰っている連中”の数はまた増えることになる。悲しい悪循環である。ミドルの白人と黒人の失業青年が、ゴミの山の上で無益な怒りと敵意をぶつけあっているとき、エスタブリッシュメントの連中ははるかに見えるマンハッタンの高層ビルの中で相変わらず精力的に働き続けている。
徹底的にデータを集め、淡々と事実を並べているだけなのに、読み手の心を揺さぶる文章。華麗なショールームの下でミンクコートを作る下層労働者を取り上げた「ミンクのコートの魔術」、世界の国の金準備の3分の1が集められているという「NY連邦準備銀行の地下貯蔵庫」など、立花隆のジャーナリストとしての才能を存分に味わうことができた。評価★★★☆☆
- 日本ペンクラブ, 常盤 新平
- ニューヨーク読本〈2〉ニューヨークを歩く
一方、この第二集に収められているのは、植草甚一、小田実ら街歩きのプロが見た生活感あふれるニューヨークの文章である。一番面白いのは枝川公一「ニューヨークにこだわる」。
タイムズスクエアの屋外広告は名物だが、その管理会社では二人の社員がネオンや照明がちゃんと働いているか、毎日パトロールして歩いている。とか、マンハッタンに引っ越してきたニクソン元大統領の散歩コースを追って、「すいた道路を選んで、できるだけ孤独を妨げられないルートを選んでいるのではないか」と想像してみる。とか、メトロポリタン美術館ではドロボウも芸術的名技を発揮する。とか、知っていてもゼッタイ役に立たないことをユーモアあふれる文章で綴っている。街に生きること、街を歩くことが本当に好きでないと、ここまではこだわれないっすよ。評価★★★★☆
宮本 美智子, ピート・ハミル, Pete Hamill
同じ著者の「ニューヨーク・スケッチブック」と比べると、べっとり甘ったるくて、読めたものではない。評価★☆☆☆☆
ウォール街
- 20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン
- ウォール街-特別編-
ウォール街の証券会社に勤める青年が、マイケル・ダグラス演じるやり手の投資家(ホリエモンみたいな奴です)に取り入り、大金といい女を手に入れる。しかし「欲は善」と言いきり、利益のためには手段を選ばない投資家に反発を覚えた青年は…という話。
この作品の凄いところは「金儲けは善か?」「愛は金で買えるか?」「父子は和解できるか?」といった一見重いテーマを掲げておきながら、そんな問題がどうでもよくなってしまうことだ。
ストーリーは予定調和である。成り上がった者は落ちていくし、不正に手を染めた者は罰せられる。だから退屈かというと、そんなことはない。
我々にはなじみのない証券ビジネスの面白いところをうまくすくい取り、インサイダーや偽装取引、スパイ行為や裏切りなどのイベントを次々と繰り出し、客を飽きさせない。goo映画のあらすじ を読むと、よくもまぁ盛り込んだものだと思うが、見てみると意外や自然な流れなのだ。映像にも気を使っていて、取引開始前後の社内のコントラストや、終盤セントラルパークの青々とした芝生の上で殴り合うシーンは印象深い。
金や愛や親子といった重いテーマ、そして金融業界というやっかいな舞台を料理して、庶民が楽しめる娯楽に仕立てた点には拍手。一晩寝て起きると何にも残らないけどさ。評価★★★☆☆
本筋とはあまり関係ないのだが気になったセリフ。「一度手にした金を失うのは、最初から持たないより辛いことだわ」全くです。
ディナーラッシュ、マンハッタン
甘いね。これはコメディっすよ。笑ってナンボの映画ですよ。
たとえばギャンブル狂の副シェフは負けが込んで、さらに大きな賭けに手を出す。(あかんでないか!by町田康)戦場のような調理場で必死にラジオ中継にかじりつく姿の哀れなこと! そして勝負にはお約束通り負けてしまう。
超いい男のシェフに女たちは見事惚れてしまうし、殺し屋はあざやかに仕事をこなす。店に居座るマフィアはどこからみてもマフィアといった風貌としぐさだし、最後はゴッドファーザーがまとめて大団円。
「復讐とうまい料理は後を引く」
つまり、お後がよろしいようで、ってやつですよ。評価★★★☆☆
- 20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン
- マンハッタン
なにしろウディ・アレン演じる中年のテレビ作家は、始終女と付き合ったり別れたり。まずレズに走って別れた元妻には未練たれ流し。いまつきあってる17歳の少女には「僕なんて回り道に過ぎない」とぬかす。そのうえ友人の不倫相手にも手を出し…
結局何もかもうまくいかないのだが、もてないブラザーズとしては対岸の火事というか、「ざまぁみやがれ」だ。ああ、こんなコトいう自分がいやらしい。
でも、東京ではこうした映画は作りにくいだろうな。純愛も不倫も相手に一途なものとして描かれる。本当にニューヨーカーは、ハエをみたらたたき落とすように次から次へ愛を営んでいるんだろうか? 評価★★☆☆☆

