「水色のエミリア」第九話
どれぐらいの時間が過ぎただろう。気が付けば、さっきまでいた、夕焼けの海の上にいた。
まだ、太陽は沈みきっていない。空と雲は、青と紫と赤のグラデーションに輝いている。海だけが、暗い色だった。
人間は、いろいろなものを壊すために、いろいろなものを作り続けている。それでも、地球は、こんなにも綺麗だ。
エミリアを見てみる。笑顔のまま、僕の顔を見ている。
「あの日、わたしもあの場所にいたの」
「えっ?」
「初めて人間の世界に来て、初めて見た人間がダイスケだったの」
「そうだったんだ・・・」
エミリアは、僕から笑顔の視線を離さない。
「だから、ダイスケに魔法をかけようとしたの。わたしのことを好きになるように・・・」
「そ・・・。そんなことしなくても、僕は・・・」
言いかけた言葉を、掴み止めた。自分でも、いきなり何を言いだすつもりなのか、驚いてしまった。
エミリアは、やはり、笑っている。
「でも、人間には魔法をかけることはできないの。魔女も神も悪魔も、最後に生まれ変わるのが、人間なんだって・・・。だから、誰も人間に魔法をかけられないらしいのよね。あーあ。ダイスケなら、わたしのことを好きになって、なんでも言うことをきいてくれると思ったんだけどなあ」
どうやら、彼女のことを好きにさせる魔法をかけられた相手は、エミリアの言うことをなんでもきくようになるらしい。つまり、エミリアの言う「好きになる」ということは、相手の言いなりになるという意味のようだ。エミリアは、神さまや悪魔にどんなことをさせようとしたのだろう。きっと、それは、とんでもなく無茶なことに違いない。
聞くのが恐ろしいという気持ちはあったが、思い切って尋ねてみることにした。
「僕が魔法にかかったら、なにをさせるつもりだったの?」
「うーんとね。エ・サマンサ・ギガレアントを殺してほしかったの」
エミリアは、無邪気な笑顔を、全く崩さない。小さな顔に、その表情は似合いすぎていた。
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