「水色のエミリア」第十六話【最終話】
エミリアは、“真なる命“を持つ以前の記憶を失っていた。
当然、僕と出会ったことも、僕と一緒に見た光景のことも覚えていない。
エミリアは、僕が話す過去の話を、僕たちが出会ったときのことを、一緒に見た光景のことを、何度となく聞きたがる。記憶がないことへの不安が、少しはやわらぐのかもしれない。
記憶を失ったはずなのに、どうして、僕のことを覚えていたのか尋ねたことがある。
「記憶はなくなっても、想いは消えないんだよ。わたしがダイスケを好きになるのに、記憶も理由も必要ないでしょ」
エミリアはそう言っていたが、僕は知っている。エミリアは“真なる命“を持つ直前に、僕に魔法をかけていた。
(わたしを忘れないで・・・)
魔法のおかげかどうかは知らないが、僕がエミリアのことを、命懸けで想い続けていたことは確かだ。これ以上想い続けると、死んでしまうのでは・・・と思えるほど・・・。
エミリアに再会する前日。大学からの帰り道、一人の女性に出会った。とても綺麗な人で、穏やかな表情が印象的だった。魔女の世界で新しい女王になった“フーフー“だ。
彼女は、エミリアが女王として魔女の世界に君臨していた時のことを話してくれた。
魔女の世界にいた女王“エ・ミリア・ギガレアント“は、かつての女王たちよりも抜きん出た力を持っていたが、その力を一度たりとも使わなかったらしい。いつも、何かを考えているようでもあり、何も考えていないようでもあり、ただ静かに存在していた。
ある時、フーフーがエ・ミリア・ギガレアントに、人間に魔法をかける方法を尋ねた。静かな女王は、そんなことは不可能だと言った。
「いいえ、できるはずです。あなたは、この人間に魔法をかけたのですよ」
そう言って、僕の姿をエ・ミリア・ギガレアントに見せた。
「この人間・・・。確かに、わたしの魔法がかけられている。
???
この人間・・・。なぜ、これほどの強い力を持っている?魔法だけじゃない・・・。何か、別の力を感じる。しかも、それは、わたしに向けられている・・・」
女王は、しばらく考えこむ。
「ガーーーッ!!」
突然、水色の髪を激しくかきむしりだした。
「ダイスケ!!」
・・・・・・。
話をしていたフーフーが、僕を指差した。
「あなたの名前を叫んだのです。もうすぐ・・・。そう、明日・・・。あの方は、あの森に現れます。女王でも、魔女でもなくなったあの方に、我々は興味ありません。ダイスケ・・・。“エミリア“を、頼みますよ」
フーフーの笑顔はやわらかく、その目はとても優しかった。
僕がエミリアと一緒に見た自動車工場の話をはじめたころ、静かな寝息が聞こえてきた。薄暗い部屋の中、僕に向けられた寝顔は、あまりにも無防備だ。いつまでも、眺めていたい。僕は、至福の時間を遠慮なく堪能させてもらった。
「おやすみなさい。エミリア」
柔らかな白い頬に、軽く口づけをする。僕はベッドに戻り、布団を被る。
エミリアが魔法を使えなくなったあと、光熱費はどれくらいになるだろう。そんなことを考えていると、ゆるやかな眠りが降りてきた。
この世界は、まだ、こんなにも綺麗だ。
「水色のエミリア」 - 完 -
「水色のエミリア」を最後まで読んでくださった読者の皆様。
本当にありがとうございました。
心から感謝申し上げます。
また、新しいのを考えています。
近々、公開できると思うので、また、よろしキュン2011。
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