“やらされ仕事”を“やりたい仕事”に変える2つの方法 | ビジネス人間学




 “日々の仕事において、自分の能力が発揮できていますか?”と聞かれたら、あなたはどう答えますか。

【画像:ギャップアプローチとポジティブアプローチの違い】

 「発揮できている」と自信を持って答えられる人はおそらく少数派でしょう。多くの人は「発揮できていない」とか「イマイチ分からない」という答えになると思います。仕事をする上では、自分の能力が生かせる環境にいるほうが少なくとも“おトク”だし、やりがいも出てくるはず。どうしてこうなってしまうのでしょうか。



 その答えの1つとして、自らの能力に対する明確な成果やフィードバックがないことが挙げられます。学校の試験を思い出してみてください。自分の解答に対して評価、例えば点数が与えられたと思います。点数がつくのは「模範となる答えがある」ためです。



 世の中にある多くの問題には、明確な答えがないものがほとんどですが、試験に出てくるような問題はさまざまな仮定が定められており、解くべき問題が明確になっています。あとは自分の知識や経験を使って、問題の落とし所を定めて解を導き出せばいい。このように定められた解答に向かい、現状とのギャップを埋めていくアプローチを「ギャップアプローチ」と呼びます。



●問題を特定してギャップを埋めるだけでは限界がある?



 目標の達成を阻んでいる問題を特定し、原因を分析し、あるべき姿と現実を埋めるためのプランを作って実行する――。このギャップアプローチの強みは“正確性”にあります。対処する物ごとがそれほど複雑ではなく、変化がさほど急激でなければ、手堅く仕事ができるのです。特に高度な正確性を求められる場合には、必要なアプローチでしょう。



 とはいえ、前回の記事で紹介したように、個人の志向が多様化しグローバル化も進む現代は、複雑で先行きが見えない「VUCAワールド」です。はっきり言ってしまえば、最近のビジネスはギャップアプローチが通用しづらい環境にあります。



 ビジネスを取り巻く環境が日々変化するため、特定するべき問題も次々と変わって、確定しづらいと思ったことはありませんか? そもそも解くべき問題が分からない、という状況も珍しくありません。また、ギャップアプローチだけでのマネジメントでは、「競合に勝つ」「予算○○円達成」といったような、“あるべき姿”を外から与えられるので、やらされ感を感じやすいところも弱点です。



 人は誰しもコントロールされすぎているとやる気をなくしてしまうもの。そのやらされ感が冒頭の「自分の能力を発揮できていない、発揮できているか分からない」というモヤモヤ感につながります。そこで、自らの能力を発揮したい場合、ギャップアプローチとは異なる「ポジティブアプローチ」という考え方が重要になってくるのです。



●自分の強みや価値から目標を描く「ポジティブアプローチ」



 ギャップアプローチが目的地点を強く意識したアプローチだとすれば、ポジティブアプローチは出発地点を強く意識するアプローチといえます。自分や組織の潜在的な強みや価値を発見し、その力が最大限に発揮される状態をつくることで目標の実現へと向かう考え方です。



 ポジティブアプローチのメリットは、自分や組織の内面のエネルギーに目を向けるので、外部環境が変わっても目標がブレにくいことです。目標に立ち戻って考え直すときにも、自分の思いや考え方を再度見返すことになるので、エネルギーが湧いてきます。



 一方デメリットもあります。このアプローチ自体が自分や組織の強みや価値、エネルギーを解き放つことを重視したものであるため、ギャップアプローチと比べて着実性は低いです。つまり、より注意して実現へのステップを考えなければならないということです。描いた目標をどう実現するか考える際には、2つのアプローチをバランスよく使い分ける必要があるでしょう。



●自分自身を知る、3つの問い



 ポジティブアプローチで重要なのは、自らの強みや価値を知ることです。就活のときに「自己分析」で経験をした人もいるでしょうが、自分自身を知るのは簡単なことではありません。ここではその手助けとなる考え方を紹介します。例えば、次の“3つの問い”について考えてみてはいかがでしょう。



・過去に親しい友人に「ここが強みだよね」と言われたことを思い出してみましょう。なければ聞いてみてください。

・自分が尊敬している人(有名人、友人、歴史上の人物)は誰ですか? その人のどんなところ(強みや特性)が好きなのか考えてみてください。

・あなたの強みが充分発揮されている2020年に、あなたが著名な新聞や雑誌に特集されていたとしたらどんな特集か、考えてみてください。どんな見出しでどのような活躍を取り上げられていますか? そしてどのような能力が生きたと言っていますか?



 自分の強みや価値は浮かんできたでしょうか。もしかすると「ポジティブアプローチって、結局ただの“きれいごと”でしょ」と感じる人もいるかもしれません。



 しかし、きれいごとだと考えているうちは何も変わりません。大事なのは、やらされ仕事で不満が溜まった状態を続けるのではなく、自分のエネルギーが湧く源泉を探求し、可能な部分から自分の強みや価値を活かす仕事を自ら作ることなのです。



●「must」「can」「want」を通してやりたい仕事を見つける



 もっと手軽に自分のやりたい仕事を考えたいな、という人には「must」「can」「want」というフレームワークで自らの仕事を見直してみるのがオススメです。3つの単語はそれぞれ下記のような意味を持っています。まずはそれを整理してみてください。



・must:自分は何をしなければならないか。自身に求められているミッション。

・can:自分は何ができるのか(できないのか)。自身の現状(強みや弱み)。

・want:自分は何をしたいのか、どうなりたいのか。自身の欲求。



 そして「must」「can」「want」という3つの円を描き、それぞれがどの程度重なるかを見るのです。自分の強みや価値からありたい姿を描くのは「want」をより明確にする手助けになりますし、3つの重なりの中で、いかに「want」とそれ以外が重なる部分を見出すかも大事になってきます。このwantと重なる領域を広げていく力を個人的に“自燃力”と呼んでいます。キャリアを積んでいくためのさまざまなチャンスを得るのに、大切な能力となるでしょう。



 さて、ここまで紹介してきたように、ポジティブアプローチで未来を描くには、自分の強みや価値といった自己理解が起点となります。次回以降は、具体的なツールと事例を使って自分の強みや価値を発見、理解する方法をご紹介します。



 さあ、今日もあなたの舞台がはじまります!



[イデリア,Business Media 誠]