「いいね!」増加で満足できない人のためのFacebook/Twitter活用術 | ビジネス人間学




 2012年の1年でおよそ15億人がソーシャルメディアを利用した。そしてその全員が、あなたを話題にしている。



 もちろん、あなたの会社についてのツイート、投稿、コメントの全てというわけではない。だが考えてみてほしい。Twitterだけでも1日当たりの投稿数は2億を超す。Twitterユーザーの半数は、自分のツイートで何らかの製品を推薦している。「ソーシャルメディアは世界最大のフォーカスグループ(情報収集の対象となるユーザーの集団)だ。コンシューマーは1日も欠かすことなく、自分は何が欲しいかをソーシャルメディアであなたに語っている」。ソーシャルメディア監視分析ソフトウェアメーカー米Crimson Hexagonのマーケティング担当副社長、ウェイン・セントアマンド氏はこう話す。



 スマートな企業なら、ソーシャルメディアからの声に耳を傾けなければならない。



※関連記事:米軍のソーシャルメディア監視技術「Riot」の底知れぬ怖さ

→http://techtarget.itmedia.co.jp/tt/news/1303/08/news03.html



 Webにある無数のソーシャルメディアから溢れ出すデータを分析することは、常に先端を行こうとする進歩的思考の組織にとってますます重要になっている。「ソーシャルメディアアナリティクス」と呼ばれるこの技術は、日々生成される洪水のようなソーシャルデータを制御し、行動につながるビジネスインテリジェンスへと変換する。



 セントアマンド氏は、「自社の事業計画へのフィードバックサイクルとして、このインテリジェンスに耳を傾けて利用しなければ、チャンスを逃すことになる」と話す。



 過去5年余り、ソーシャルメディアのトラッキングと分析は、ファンやフォロワーの数、「いいね!」の数、トラフィックなどの数字に焦点が当てられてきた。だが今では「全てが変わった」と指摘するのは、米PRマーケティング企業Schneider Associatesのデジタルインテグレーション・ソーシャルビジネス担当ディレクター、ダン・マーテリ氏だ。「企業はデータ収集がうまくなり、集めたデータを自社のデジタルマーケティング戦略を周知させるためだけでなく、よりスマートな意思決定のために使うことを学んだ」と同氏は語る。



●ソーシャルメディアの中のダイヤモンド



 「ソーシャルデータを分析することは、組織のほぼどんな部分にも応用できる」。コミュニケーション、広告、アナリティクスサービスを手掛ける米WCGの分析担当ディレクター、チャック・ヘマン氏はこう語る。



 広報/マーケティングから顧客サービス、人事、製品開発に至るまで、学んで行動を起こすチャンスは存在する。ヘマン氏は、自身が購入した新しいテレビで直面した問題についてTwitterでメーカーへ連絡したところ、その問題は数日で解決したという。



 ヘマン氏がしたような顧客からのフィードバックは確かに貴重だ。だがソーシャルメディアをモニターしている大企業が、日々何百、何千と送られてくるツイートやFacebookの投稿、YouTubeのコメントを意味あるものにするためには、どうしたらいいのか。



 世界的なホテルチェーンの米Best Western Internationalは、系列ホテルに対する評価に影響を与える可能性が高いソーシャルデータの流れについて幾つか認識している。世界で月間2億のユニークビジターが利用するという「TripAdvisor」のようなWebサイトは、旅行者がホテルやフライト、レストランなどについて自分の体験を共有する場を提供してきた。



 Best Westernのメンバーサービス担当副社長、マイケル・モートン氏は、「コンシューマーは、ソーシャルメディアからのフィードバックに基づいて購入するかどうかを決めている。ユーザーは、こうしたフィードバックが真実で、純粋で、ブランドに監視されていないと信じている」と話す。



 ソーシャルメディアで交わされる内容に利用価値があるのは、単にユーザーが自分の体験を共有しているという理由だけではないという認識がBest Westernにはあるという。そこで同社は、顧客体験管理を手掛ける米Medalliaと組んで、ホテルがソーシャルメディアからのフィードバックを管理して返答するためのソフトウェアを開発した。



 同ソフトウェアは、顧客の感情の把握や分析も可能だ。例えば、ホテルのインターネット接続速度に関する話題が最も多くのコメントを集めたとしても、宿泊客がそのホテルを推薦するかどうかに与える影響は限定的だという実態を、このソフトウェアで示すことができる。その結果、客室の清潔さなど、推薦してもらえるかどうかに最大の影響を及ぼす分野に資源を集中できるという。



 前出のCrimson Hexagonや米salesforce.com、カナダのSysomos、米Medalliaなどのソーシャルメディア監視分析ツールを利用すれば、企業はコンシューマーがネットで何を語り、どんな情報を共有しているのかを把握することが可能だ。「コンシューマーが関心を持っていることや、特定のブランドについてもっと聞きたいと思っていること、どんな顧客サービスを経験し、どんな製品の開発を望んでいるのかを知ることができる」と、WCGのヘマン氏は言う。



 Crimson Hexagonは、ソーシャルメディアトラッキングシステムを通じて日々膨大な量の情報を収集して処理する。同社がソーシャルデータの蓄積を始めた2008年以来、これまでに収集した投稿は約2500億件。その数は、2日ごとに10億件ずつ増えている。



 Crimson Hexagonのソフトウェアは、ソーシャルメディアのチャネルや競合相手の名称などの要素によってトラフィックを分析できる。「当社のアルゴリズムを利用すると、ブランドのために何に配慮すべきかが分かる」とCrimson Hexagonのセントアマンド氏は説明する。



 例えば、米Starbucksが新しいコーヒー飲料について顧客の反応を知りたいとする。そのコーヒーは滑らかさが話題になっているのか。それともコクか、酸味か。セントアマンド氏によると、「ソーシャルメディアで話題になっている良いうわさや悪いうわさを知るだけではなく、なぜコンシューマーがこうした反応を示しているのかを知ることも重要だ」という。



 「理由が分かればその情報に基づいて行動できる。真価はそこにある」(セントアマンド氏)



 後編「『クリネックス』でも活用、Facebookで顧客を動かす方法とは?」では、ソーシャルメディア分析を活用する際の注意点を整理する。



本稿筆者のアーロン・レスター氏は、米国ボストンを拠点とするフリーのジャーナリスト。



※後編:「クリネックス」でも活用、Facebookで顧客を動かす方法とは?

→http://techtarget.itmedia.co.jp/tt/news/1306/26/news04.html