【ロンドン藤好陽太郎】英国とドイツ、フランスの首脳は3日、24日からピッツバーグで開かれる主要20カ国・地域(G20)金融サミット(首脳会合)に向け、共同声明を発表した。世界経済について、「危機は終わっていない」と表明。金融機関の巨額報酬の抑制をめぐっては、制裁措置が必要とした。

 4日開幕するサミット準備会合であるG20財務相・中央銀行総裁会議での議論にも影響を与えそうだ。首脳らは、世界経済は安定化の兆候が出ているとしながらも、「設備稼働率の低迷で、労働市場は今後、数カ月影響を受ける。景気刺激策を完全に実施するとのメッセージが必要」と強調した。

 また金融規制では、「危機以前に広がっていた行動様式に戻れると考えている金融機関さえある」と指摘。金融危機の一因とされる報酬制度について、「ボーナスなどの多くは、支払いを遅らせ、銀行の業績次第で取りやめるべきだ」などと提言。国ごとの制裁措置の導入を求めた
今年6月の完全失業率は5.4%となり、雇用情勢が一段と深刻さを増す中、7月に発表された2009年度の「年次経済財政報告」において、企業内失業者が過去最悪の607万人になったとの推計が明らかになった。
 完全失業者の定義は、「就業しておらずかつ就職活動をしている失業者」。社内の余剰人員となり、一時帰休などの措置を受けている人は「就業者」となるが、彼らは「隠れ失業者」とも呼ばれ、将来的に失業率を押し上げる。

「隠れ失業者」が増加したのにはわけがある。昨年12月に休業手当の一部を助成する「雇用調整助成金」の支給要件が大幅に緩和されたからだ。余剰人員を景気回復まで温存したい会社が、助成金を積極的に利用したわけだ。
 だが、結局は人員整理に手をつけざるをえなくなった企業も増加している。日本総合研究所の山田久氏は、「失業率は過去最高の5.5%を超え、今年後半には6%台に達するのではないか」と話す。また山田氏は、現状を「1980年代の欧州の状況と類似」と指摘。当時、派遣規制の強化によって欧州企業は競争力を削がれ、雇用状況が厳しくなったという経緯があり、今後の日本の雇用情勢を危ぶむ。

 さらにいえば、そもそもこの完全失業率には「非労働力」とされる専業主婦やニートは初めから除外されている。彼らの中には「働きたいけれど働けない」者も多いが、日本は世界的に見てこの非労働力の割合も高い。政府は「隠れ失業者」の“過剰な労働力”の受け皿づくりを急がねばならない。
7月に5.7%と過去最悪になった完全失業率(季節調整値)は、企業の輸出や生産が回復に向かっているにもかかわらず、今後一層悪化する可能性が高い。先行きの不透明感から、依然人員抑制に走る企業が少なくないと見られているためだ。雇用環境の悪化が消費減退を招き、さらに企業に雇用調整を促すという悪循環に陥る事態も想定されている。

 失業率は、景気動向の推移より半年程度遅れる「遅行指標」だ。しかし、あと半年で改善に向かうかとなると、慎重な見方が大勢を占める。企業が採用増に転じても、人件費の安い海外で調達するなら日本の失業率は下がらない。リストラで業績が好転した会社なら、簡単には雇用を増やさないだろう。

 7月末、内閣府所管の経済企画協会がエコノミスト36人の予測をまとめたところ、今後完全失業率は09年10~12月の3カ月平均で5.56%になり、5.7%に達するのは10年4~6月(5.66%)という見立てだった。ところが、現実は早くも上回った。

 金融危機、長引くデフレで体力の弱った企業は業績回復に時間を要し、今後も採用抑制や人員削減に踏み切る--。多くのエコノミストはそう見ているが、雇用情勢の悪化は専門家の予測を超える勢いで進んでいる。

 日本企業は、生産に見合う水準を超えた「過剰雇用者」を、過去最多の607万人(09年1~3月)抱えているとの政府推計もある。「失業予備軍」が7月の完全失業者数(359万人)の2倍近くいるわけで、当面雇用情勢が回復しないことを示唆している。