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見放題を“使い倒す”方法、教えます──Huluトップページの秘密

「Huluのお店作り担当」ことジオ・リー氏

 就寝前、いつものように「ウォーキング・デッド」の続きを見ようとHuluを開いて思わず手が止まった。おいしそうにうどんを食べる人たちの画像と「まいうーな作品集」というタイトル。食欲の秋にぴったりの、グルメがテーマの映画や番組を集めた特集のようだ。ご丁寧に「お腹が空くので要注意」と書いてあったがもう遅い。ゾンビよりも破壊力のあるタイトルの数々に負け、深夜1時をまわってから「孤独のグルメ」とカップ麺を堪能してしまった。

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 視聴者の“見たいもの”は、そのときの気分次第でコロコロ変わるものだ。そんな気まぐれなニーズに対し、見たいものを好きな時間に見られるというのは、HuluのようなSVOD(Subscription Video on Demand:定額制ビデオ・オン・デマンド)の良いところだろう。一方、運営会社にとっては、いかに多くのコンテンツに触れてもらい、顧客満足度を上げるかが重要。その晩、予定外のコンテンツを見たことは、「まいうーな作品集」を作った人にとって満足のいく結果だったにちがいない。カップ麺の件はともかくとして。

●映画好きが作るHuluの“お店”

 Huluで特集の運用を担当しているのが、韓国出身のジオ・リー氏だ。大学で映像制作を専攻し、20世紀フォックスのプロモーション担当や国内大手ビデオレンタルチェーンのバイヤーも経験したという、根っからの映画好き。今年1月からフールージャパンLLCでコンテンツパートナーのマネジメントとエディトリアルを担当しており、トップページに掲載する特集や作品の選択も任されている、いわば「Huluのお店作り担当」だ。

 自分の仕事を「Huluを“使い倒してもらう”こと」と言い切るリー氏は、定額制の見放題だからこそ、ユーザーに対するリコメンドは重要だという。「Huluに来たら人気作品以外でも『おっ』と思う作品を紹介したい。そのために特集には力を入れています」。

 Huluトップページには、新着タイトルや注目タイトルと並び、「トレイ」と呼ばれるワイドな枠を使った特集が常時複数用意されている。問題(?)の「まいうーな作品集」もその1つ。ただ、コンテンツの量も“売り”のサービスなら、多くのタイトルを並べようとするのではないか。実際、他社のサービスではその傾向も強いが、一方でHuluのトレイは意外なほど大きな画像とフォントでスペースをぜいたくに使っている。

 「私は、単にたくさん見てもらうことだけが良いとは思っていません。それだけなら『ウォーキング・デッド』のようなメジャーなタイトルを多く並べるだけで数字は上がるでしょう。Huluが重視しているのは、知らなかった作品に出会う“きっかけ”。これまでになかった切り口のテーマを増やしたいと考えています」。

 さらにユニークなのは、タイトルに“旬”なキーワードを入れて自然と目に入るようにしていることだ。例えば、世間でNHKの連続テレビ小説「あまちゃん」が話題になっていたら、小泉今日子さんが過去に出演した作品にフィーチャーした特集を作り、タイトルには「じぇじぇじぇ」。ドラマ「半沢直樹」が注目を集めていたら、復讐劇の特集を組んで「倍返し」のフレーズを使う。さらに、ドラマの最終回が放送されるとすぐに「100倍返し」に切り替えるなど、実はけっこう芸が細かい。それを敏感に察知したユーザーが、Twitterなどで「Huluがうまいことやった」「便乗してる www」などと、つぶやくことも増えた。

 「はい。便乗させていただきました」と笑うリー氏にとって、ネットのリアルタイム性は大きな武器だという。特集の制作は、テーマに合った作品をピックアップしたら、画像などの素材を集めてページを作るだけでいい。タイミングを見てタイトルを変え、ユーザーの声を反映して修正を行うこともできる。

 「例えば、規模の大きいリアル店舗で特集のような企画をやろうとすると、仕入れのリードタイムや販促物の作成などにかかる時間を考えなければなりません。どうしても1カ月後とか、先の話になってしまいます」。しかしオンラインなら、時間的なロスはあまり考えず、逆に旬な特集を提供することで時間を味方にもできる。

 11月には、犬が出演する作品を集めた特集がアップされた。ご想像の通り、理由は11月1日が“犬の日”だから(わんわんわん)。今までにあまりなかった切り口であるとともに、「きっと2月22日には猫好きのための特集がアップされる」などと期待させる効果もある。「猫が出演する映画は意外と少ないので検討中ですが、オンラインならではの小回りの良さは大きな強みですね」(同氏)。

●求められるのは、“全米ナンバー1”ではない

 特集テーマに沿った作品をピックアップできるだけのコンテンツがそろっていることも重要だろう。Huluの場合、常時1万以上のコンテンツを用意しており、新しいパートナーシップも積極的に進めている。11月からは「TBSオンデマンド」から3000本以上のドラマやテレビ番組がリストに加わり、得意の海外コンテンツに加えて国内の作品も大幅に増えた。

 1つの特集に入れるコンテンツ数は十数本から二十本程度。「なるべく多くの作品をカバーしたいと思っていますが、普段はスポットライトの当たらない、埋もれている作品を発掘してユーザーに提案することも重要です。例えば“倍返し”の復讐劇特集にはバイオレンス作品なども含まれています。普段は見る人も偏りがちなジャンルですが、テーマを入り口にすると見ない方々も見やすくなるようです」。

 ちなみに、“復讐劇”特集で最初にトップタイトルとして挙げたのは、「オールドボーイ」だった。12年前の作品で知名度も高いとはいえないが、想定を超えるユーザーが視聴してくれたという。

 「日本は世界2位の映像市場で、子どもの頃から劇場やテレビまで映像に親しんでいます。求められているのは、“全米ナンバー1”ではありません。もちろん、Huluは米国生まれなので良い部分は吸収していきますが、それよりも日本にマッチしたものを出してくことが大事だと考えています」。

 目の肥えた消費者は、週ごとのランキングがベースで年間56本も出てくる“全米ナンバー1”が、あまりアテにならないことはよく分かっているが、映画産業に長く関わってきた人の口から聞くと真実味も増す。もちろん映画好きだからこそ、口に出せる言葉だろう。

 「私は、『映画は日常からのエスケーブ』という言葉が好きです。非常にベタですが、トップクリエイターほどこれを言いますよね。以前は私もベタすぎる思っていましたが、Huluに入ってよく感じるのは、ネガティブな現実逃避ではなく、前向きなエスケーブがとても楽しいということ。もともと映像エンターテイメントが一番得意としている部分であり、自分たちはその手助けをしているのだと強く思っています」(リー氏)。

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