【狛犬とは】
邪気を祓い、神前守護の意味を持つとされる。玉を持っているもの、子を従えているものなどさまざま。
雌雄一対で、一方が口を開けた「阿」、他方が口を閉じた「吽」の形をしている。
阿吽とは元々仏教発祥の地インドのサンスクリット語。「阿」は初めの音、「吽」は最後の音で、宇宙の始まりと終わりを表すといわれている。
これは仁王像にも由来する表情であるらしい。
【起源】
エジプトやインドとされている。
シルクロードを通り、中国から朝鮮半島の高麗（コマ）を経て日本に伝わったために、「外来の犬」という意味で高麗犬（コマイヌ）と呼ばれるようになった。
そしてその形態は、日本で様々に進化を遂げた。
【日本での狛犬】
魔除けの力を持つものとして、天皇のおわす宮中で、几帳や御帳の裾を押さえる木製の重子（鎮子）として用いられていた。
それが神社や寺院で使われるようになり、拝殿前や参道に置かれるようになっていった。
つまり、日本での狛犬は元々外に居たのではなく、部屋の中から外へと出ていったという事になる。それに伴い、木製のままでは傷むため、風雨に強い石材の狛犬へと変わっていった。
狛犬は本来どちらも雄だが、狛犬と獅子で雌雄一対とされるようになった。
阿（陽）が雄、吽（陰）が雌とされていたが、江戸時代にバラバラになってしまう。
また、神殿の狛犬とは別に庶民が独自に製作したものは、神殿のものと姿がかなり違う。
庶民や地方の村石工は狛犬を実際に見たことがない。「宮中には”こまいぬ”というものがあるらしい」と伝わってくるもお手本にする作品がなく、その為石工の数だけユニークな狛犬が誕生することとなった。
庶民が奉納する初期の頃の狛犬は、獅子よりも犬に似ている。
（↑私仁宇が一番好きなエピソードです。どんな姿だろうと想像しながら犬をモデルに一生懸命作っていた姿を思うととても微笑ましいですよね。
作った人の数だけ色んな姿の狛犬がいる、一番面白くて興味深い点だと思います。）
＜獅子＞
神前の左側（向かって右）、上位の位置。阿形（陽）、雄。
たてがみは緑青の巻き毛。体の色は黄色、もしくは金箔。金色の毛描がされることも。
中国の霊獣。13世紀頃に中国を経て沖縄に伝わってきた。
沖縄では、狛犬ではなくそのまま獅子を意味するシーサーとして、独特な形へ発展していった。
＜狛犬＞
神前の右側（向かって左）、下位の位置。吽形（陰）、雌。
たてがみは群青の直毛。体の色は白色、もしくは銀箔。
日本に伝わった際に犬の一種とされ、中国内で異国の獣なのだと考えられた。
一説では、獬豸（カイチと読む。頭に一角を持ち、人が闘う所を見れば邪悪な方に挑み、人の論を聞けば不正の方を噛む、正邪を分かつ生き物）の性質が狛犬と重ね合わされ、一角がつけられたという話もある。
時代を経るにつれだんだん角が退化していき、近代の作では一角のある狛犬はあまり見られなくなった。
【時代変遷】
平安時代………京都御所の紫宸殿に獅子、狛犬像の原型といわれる作品がある。
宮中の調度品として御帳の重子等に使われた。神殿狛犬とも呼ばれる。
鎌倉時代………木彫りの狛犬全盛期。ヒノキ材等。
青銅や銖製のものもあったが、時の権力者が作らせたものも多い。
目を玉で表現する玉眼の技法もこの時代。
1196年（建久7年）作 最古と言われる石造狛犬が、奈良県東大寺南大門の
裏側にある。しかし形状は完全に中国獅子で、
日本生まれの狛犬の姿ではない。
南北朝時代……頭部と上体に重きを置き、下半身を小さく造り、
このアンバランスの上に迫力を生み出そうという傾向が出てくる。
江戸時代………体の力が抜け、造形的な面白さのみを追い、激しさや厳しさは無くなる。
狛犬信仰の全盛期。
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