編集・文責…森達也(劇団ギルド電撃蛍主宰&新栄トワイライト運営)


 一人芝居を数多くセルフプロデュースしてきた青山和樹さんと、役者として幾多の舞台を経験し、数多くの人間になりきってきた山岡黛佳さん(以下敬称略)。名古屋の学生演劇界で活躍しているおふたりに今回の一人芝居企画に対する意気込みなどを聞いてみた。


 


森 マッチングの結果が公表された時、お互いにどう思いましたか?


山 出た(笑)


青 (笑)

「ああ……こいつかぁ」って思ったね。


山 「あ、青山さんか」ですね。


森 なるほど。


青 今回の役者人の中で一番共演経験があったからさ。ぶっちゃけたこと言うと、ほっしー以外の、初めて会う子たちと組んでみたいなってのは思ってたんですけど。まぁ…ね(笑)


 

※ほっしー…山岡氏の所属する「劇団バッカスの水族館」内でのあだ名。青山氏もこのあだなで山岡氏のことを呼んでいる。


 

山 マッチングが公表された後で青山さんからLINEで「お前かーーい!」ってメッセージ送られてきましたよ(笑)


一同 (笑)


青 送ったね。


森 山岡さんからしたら「こっちの台詞だよ」って感じでしたか?


山 いやでも私は、本当のことを言うとくつなさんか青山さんがよかったんですよ。


森 そうなんですか?


山 あでも、私、人見知りなとこがあるので、この短期間で知らない人と打ち解けて芝居作るのは難しいなって思ってたんで。


森 なるほど。


山 けど、自分の役者としての幅を広げるって意味では、知らない人と組んだほうがよかったのかもしれないとは思うんですよ。けど、制作期間考えると、青山さんとペアになるのが一番良かったかなって思います。


青 それはね、俺も思ってんだ(笑)

実際問題、俺がかなり忙しいから、制作期間が短いのは予測ついてたし、だからこそ「お前かーーい!」とはなったけど、初対面の人より気心知れた人の方が良いなって思ったね。


森 そうですねー。青山君はとにかくお忙しいですからね。


山 お忙しいですもんねー。


 

※青山氏は新栄トワイライト以外にも数多くの演劇、アート活動を行っており、3月下旬までスケジュールが埋まっているそうです。詳しくは新栄トワイライトの当日パンフをチェックしましょう!


 

青 …すみません本当に。


森 (笑)


山 まじで稽古日程ないですもんね。私が成人式だったり。


青 いろいろイベントあるもんねお互い。


森 おふたりは共演経験が何度もあるとのことですが、初対面はいつだったんですか?


山・青 初対面?


青 7974かな?


 


※7974…「劇団バッカスの水族館」第79回公演で上演した芝居のタイトル。


 


山 私は学生演劇祭で知ってました。


 


※学生演劇祭…名古屋学生演劇祭のこと。今年で6回目を迎える。青山・山岡両氏は第4回・第5回学生演劇祭にそれぞれ別団体で参加している。


 


青 あ、そうか。


山 いや、もっと前ですね。私は『嵐になるまで待って』の時だ。


 


※嵐になるまで待って…「演劇集団キャラメルボックス」の成井豊作の演劇作品。2014年に「劇団バッカスの水族館」が同作品を名古屋市内で上演し、その時に青山氏も役者として参加していた。


 


青 その時に認知はしたけど仲良くはなってないよね?


山 そうですね。認知しただけですね。その後に学生演劇祭で青山さんの劇観て、「うわ…やばいこの人」ってなって。「怖いこの人」ってなりましたね(笑)


森 『脱出、脱走。』ですか?


山 そうです(笑)


 


※脱出、脱走。…青山氏が主宰する「野坊主」という団体が上演した一人芝居。名古屋の小劇場演劇界を青山氏の視点から観察し、風刺を加えるという話。


 


山 で、『7974』の時に共演したら、年が1つ上でびっくりしたって感じですね。最初は学生演劇祭のインパクトが強かったんで、「怖い人かな」って思ってたんですけど。


森 青山さんの何が怖かったですか?


山 いや、もう『脱出、脱走。』のインパクトが強すぎて。心、病んでんじゃないかなぁって思って。


青 あのイメージそんなに強かったか(笑)


森   青山さんが山岡さんとガッツリ関わるようになったのは『7974』からですか?


青   いや、俺もはっきり認知したのは学生演劇祭の時で、そん時にすげぇ叫ぶ役どころだったのが印象に残ってるかな。


山   しっかり絡むようになったのは2月に全国学生演劇祭観に行った時ですよね。


森   全国ってことは、京都ですか?


青   バッカスの水族館に関わったことのある4人で、僕とほっしー含めた4人で全国学生演劇祭観に行きついでに軽い京都旅行に行ったことがあるんですよ。


山   車で行ったんですけど、運転してくれた人が歴史とか、生物のクイズ出してくれたんですよ。私はいくつか答えられたんですけどこの人は馬鹿なんで(笑)答えられてなかったです(笑)


青    うるせぇ!(笑)


森   (辛辣や……笑)じゃあ割と仲良い段階でペア組んだので、初稽古でそわそわしたりとかは無いですね?


青   普通にうちで稽古しよかってなったよね?


山   12月24日に(ボソッ)


森   クリスマスイブですね(笑)


山   そうですね。私が稽古をして、青山さんがひとりでケーキ食べてるっていう初回稽古でしたね。


{29F248E0-EC34-49D4-B9D1-2BA4B6484FCB}

長い独白に感情と抑揚をつけるのに苦戦中の山岡氏



〜作品について聞いてみた〜


森   今回上演する『グレーの私とレギュラーな関係』という作品はどういった内容のものなんですか?


青   これはですねぇ…どう紹介するか最近まで迷ってたんですけどね。最近思いついて、いいなって思ったのが、「山岡黛佳が青山和樹になる話」っていうのが一番しっくりきますね。


森   「山岡さんが青山さんになる」って言うのは、舞台上で山岡さんが青山さんの思いをお客さんに向けて発信するっていうことですか?


青   あぁ……ちょっと違って、この作品のポイントとしては「『男』が『女』の芝居を書いて、『女』が『男』の書いた台本を読む」ってとこがポイントかな。これについてはあまり詳しく触れられないけど。


森   性別の違うおふたりがペアを組んだっていう出来事自体がこの作品が産まれるきっかけになったってことですか。


青   そうだね。あと、これは台本書く前に話し合ったことなんですけど、ほっしーに何をしたいか聞いた時に、まず出てきた答えが、「自分以外の誰かを演じたい」っていうものだったんですね。っていうのもあって、彼女自身のことではなくて、男性の、俺の書いた言葉を発してもらおうかと思ったんだよね。


森   「誰かを演じたい」っていうのはせっかく舞台に立つなら自分の主張を発するよりは、やっぱり他の誰かになりきりたいという思いがあったということでしょうか?


山   ……はい(笑)


青   お?なんで急にわらうの?(笑)


森   「急に話ふるなよ」みたいな笑いですか?(笑)


山   いや、インタビューって大変なんだなぁって思って(笑)


森   なるほど(笑)

山岡さんは一人芝居に出るのは今回が初めてですか?


山   初めてですね。


森   では、今回この企画に参加したのは一人芝居っていう初めてのジャンルに挑戦したいっていう思いから参加を決意されたわけですか。


山   そうです。


森   一人芝居と集団で作る芝居はどういうとこが違うなと感じますか?


山   うーん、ずっと視線が私だけに集まるっていうのと、私ひとりでステージを作っていかないといけないっていうとこですね。今まで大勢の人間が出るお芝居しかやってこなかったので、今まで経験したことのない種類の大変さがありますね。大勢のお芝居だと、私の失敗を誰かがカバーしてくれるかも知んないけど、今回は誰も助けてくれないから…。


青   責任が違うよね。


山   そう!責任の重さが違いますね。


森   責任の重さが違いますか。


青   分かるわぁ。


森   そりゃー青山さんはよく分かるでしょうよ(笑)


一同   (笑)


森   作者である青山さんはこのお芝居をどういう人に観て欲しいですか?


青   そんなにいない……。

あー。インターネットとかTwitterみたいな、SNSツールにどっぷり頼ってる人に観てもらいたいね。


森   現代っ子…もとい現代人の多くが当てはまりますね。


青   そうなんですよ!少し原始的な考え方かもしれないですけど、最近ってTwitterとかLINEっていういわゆる「SNSツール」でまず仲良くなって、そこから直接会うって感じのコミュニケーションがあると思うんですけど、そういうのってなんかおかしいなって思うんですよ。まぁぶっちゃけ、しょうがないとこはあるんでしょうけどね。でも、そういう観点も意識して観てもらえるといいと思いますね。


森   山岡さんはどのような方々に観てもらいたいとかありますか?


山   観て欲しい人ですか……?


青   あ!俺、観に来て欲しい人いるわ!


森   お?誰ですか?


青   「俺じゃなくて山岡黛佳を観たい人」


一同   (笑)


青   俺の話は聞かなくても山岡黛佳の話なら聞くって人はいると思うのよ!


森   どうしてそう思うんですか?


青   これ、「脱出、脱走。」の時の学生演劇祭の感想用紙に書かれてたことなんですけど、「このお芝居は女の人がやっても良かったかも知れませんね」ってのがあったんですよ。で、その時に思ったのが、「男が言うと聞いてもらえないようなことでも、女が言えば聞いてもらえるかもしれない」って思ったんですね。


森   なるほど。


青   っていう観点もありますね。


山   じゃあ私は山岡黛佳の芝居が観たい人のために芝居します(笑)


一同   (笑)


森   山岡さん本人の口からそのセリフ聞くと凄く面白いですね(笑)


山   あ、編集でこの部分はカットしといてください(笑)


森   (笑)

それでは以上でインタビューを終了いたします。おふたりともありがとうございました。


山   ありがとうございました。


青   おつかれさまでーす。


{BE623C17-2F7D-49B1-8C2C-BBE593F94120}

山岡氏の演技をじっくり観察する青山氏


   今回取材したおふたりは付き合いが長いということもあって、予想以上にざっくばらんかつリラックスした雰囲気で取材に応じてくれました。また、取材の中で言及されたように、このお芝居は、作者である青山氏が思い描く「SNS社会」の一端が描かれています。それはいったい、どのようなシーンでどのような形で現れているのか…。答えを知りたい方は是非明日クラブロックンロールにお越しください。