
ある日、お風呂へ入ろうとしたら
犬が後ろから洗面所までついてきたよ。
僕「ハウス」
しかし強情な犬である。
犬は居座って洗面所を出ていかなかった。
僕「ハウス!」
ちょっとキツめに言っても動じない。
ハウスってなんですか? どういう意味ですか?
みたいな顔をしてみせさえする。
常日頃からこの調子なのだ。
やりたくないことは聞こえないふり。
言ってほしいことだけをじっと待つ。
実は人間の言葉をけっこう理解しているくせにこの態度。
まったくもって自分勝手な犬である。
しかし、そんなにも自分と一緒にいたいと思われているというのは悪い気分じゃない。
僕はなんだか犬が可愛くなってきた。
仕方ないなあ、なんて口元がだらしなく微笑んできてしまう。
僕「じゃあ、一緒に入ろうか?」
犬「それはイヤ」
そうとでも言うかのように、犬はあっさり身をひるがえして洗面所を出ていった。
