埃まみれの本棚 -2ページ目

埃まみれの本棚

黒翼種の片翼しかない末っ子がしたためる記録書。

今日王の涙する日だよと、兄様からぼんやりと聞いた

空耳かもしれなくてわからなくて、それでも遠い彼の地を見つめた

生憎の空で美しいとはいえなくて、脆い器に刺さる冷たさは痛くて震えた

片翼はぎしりと錆びた骨組みのようなまま


芯がきれ、手に持った淡い蝋の火がゆらりと揺らめいて消えた

淀んだ雲の切れ間から月が顔をだした


その月がとても綺麗だったから

ただそれだけの理由で

飛べないことも

片翼しかないことも忘れて



私は窓枠に手をかけた
彼の地にひやりとまとわりつく

それは風か雨かはたまた何か

かつての足音はそこになく

あるのは通る風の音

地の奥深くにひっそりと

佇む祈りも音はなく

あぁ今一度溢れるのは

黒い羽と赤い花

ごとりと動き始めよう

今宵の月と星の光の下で

彼の名を呼ぶ代わりに

長い深淵に横たえて

尊き彼に目覚めの刻を


何時かに舞い散るその色は
色褪せずその御霊
光の時に攫われず
鮮やかに映されるか

誰が為咲いて誰が故散るか
あゞ無情で非情と咽び泣き
否無常で非常と終ぞ笑む

あの日の匂いは有らずとも
燻る火種はいずこに在りて
記憶無き民声荒げ
御霊聞く民常祈る

若き狼の気高き背中
天登る光に翳りとも
契りて推した己はみる
黄土と紅花が咲く頃に
その影ある御身逢間見えんと

誇を捧げ母に散った若獅子を
母の闇に帰さぬように


こっちに載せるの忘れてました。
誇り高き戦士に哀悼の意を。

H25,0815