神経を抜く治療はしない方がいいと考えている患者さんは最近、多くなったように感じます。酷いう蝕に侵された歯の機能を回復させるための優れた治療法であるという認識からは程遠いように思われます。いつ頃から、増えてきたのかは定かではありません。増えてきた理由として、下記の3つが考えられます。
理由➀:歯科医の診断と手技に対する不信感。
患者さんの声:とにかく痛い治療らしい、あるいは痛かった。まともに麻酔が出来る歯科医がいない。針みたいなものを突っ込まれて、何度も痛い目に遭った。
理由②:予後不良が多い。
患者さんの声:根の治療のあとが痛い。根の治療が何時までも終わらない。根の病気はどうせ治らないのでので、抜いた方がいい。
理由③:抜髄そのものに対する評価。
患者さんの声:仮にうまく行った場合でも、神経を抜くと歯は早く駄目になる。抜髄した歯は、枯れ木の様に折れやすくなる。神経を抜いた前歯は黒ずんでくる。
根拠になっている事実があるかどうかを調べてみたところ、ネットで下記の歯科相談の質問と答えに出会いました。
質問:神経の治療(根管治療)は何回歯医者に通えば治るのか?いつになったら痛みが消えるのか?
答え:根管治療を受けた後に、症状の再発で悩んでいる方は多いのではないでしょうか。日本の保険診療において、レントゲンで症状の再発が認められた割合は45~70%と非常に高いです。言い換えれば、根管治療を受けて成功する割合はたった30~50%しかないと言えるでしょう。歯の根の治療で「歯医者に何度も通ったのに治らない」という方が多いのはこのためです(数値の信頼性は不明です)。
患者として、及び歯科医としての経験から、俄かには信じがたい事ですが、根管治療に対して患者さんが抱いている冒頭の不安と不満を裏付けるような回答がなされていました。
これは歯科医側の問題として、どこに原因があるのかを突き止める必要があると思いました。
考えられる原因の一つは歯科医のスキルの劣化があると思います。経験を通じた能力の不足です。抜髄・根管充填をセットにした普通の標準的な治療を、来る日も来る日も行ってきたという経験がないと思われます。
今一つの原因は多くの歯科医が採用している手技か薬剤によって、根管の消毒、無菌化が不徹底
になることが多いためではないかと思われます(詳細な比較が必要ですが)。
一度トラブルになった歯の根管治療を、私費で行う歯科医院の出現は私には奇異に感じられていましたが、それに頼るしかないと考える患者さんも増えているようです。審美重視の補綴治療であればこそ、根管治療の重要性は強く認識されなければならないと思います。