漆黒の霧

漆黒の霧

この世で一番醜い生きものは?

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亮太に指輪を返した。


「やり直そう。俺が悪かった」


たった一言で済む話を


言い訳を交えながら、延々と3時間も引っ張った彼に


正直ウンザリしてしまった。


許す許さないの前に、感情が湧いてこないので


どう答えて良いか分からなかった。


あの時、少しだけ泣いた理由が分からなくなった。


随分経ってから、ふと、頭に浮かんだのは慶の顔だった。


亮太を通して、彼との過去に泣いてしまったのか。


今では、亮太と婚約していた事すら記憶が曖昧になってる。


一生を決める大事な事を、私は真剣に考えていたのかな。


早紀の思惑とは裏腹に、亮太と別れた私はホッとしてる。

いざとなったら、我が身可愛さに


あっさり他者を切り離すような人間が


念仏の様に、流行病の様に、この言葉を口にする。


東北に住む私の友人は、あの日被災し、数日間連絡が取れない状態だった。


その時の、地元の知人の言葉に私は笑ってしまった。


「ニュースで見たけど、今、避難所の人達って食事が全然足りてないんでしょう?


だから私、ここ数日昼食を抜いてるの。同じ苦労を味わいたいから。」


昔から肥満体型で、ほぼ毎日子供やママ友とダラダラおやつ食べてる人間が


至極まじめに電話口で、さも美談の様に、そう言ったのだ。


まぁ、そんなセリフ想定内だったし


私以外の人にも当然話しているだろう。


聞いた人間の中で、いったい何人が違和感を覚えるだろう?


違和感なんて無いかもしれない。


「私もマネして、今日から 『しばらく』 お昼抜こうかな~


それで痩せたら一石二鳥だし!」


・・・ここまで言ってたら、お手上げだな。

早紀に亮太を寝取られた ガクリ


夜中に届いた早紀のメールで知ったんだけど。


そのメール、本文は一言も無く添付画像のみ。


高画質が裏目に出て、誰がどう見ても・・・


「コトの最中」


と分かる。しかもちょっとブレてる。


ショックを通り越して


「よくこの体制でシャッター切れたな H


と、感心してしまった。


亮太、ごめん。その娘、私の従姉妹だよ。


法事でのつまらない喧嘩を根に持って、私への腹いせに、君に声を掛けた。


ちょっと複雑なんだけど説明した方が良い?


・・・まぁ、いっか。イイ思いしたんだし。浮気したほうも悪いし。


真実は告げずに、指輪だけ返そう。


逃した魚は小さかった・・・。小魚でも、骨のある奴だと思ってたけど。


亮太のせい・・・というか、早紀と喧嘩した自分のせいで、また1から魚を探す羽目になった。


「面倒くさい 顔8」 と呟きながら、少し泣いてしまった。


いい歳して。大した事でもないのに。