『鎌倉殿の13人』~後追いコラム その145
第43回 資格と死角
今回は、泰時(坂口健太郎)は禁酒中??について。
今話で弟朝時(西本たける)と食事をしていた泰時が、傍にあった瓶子(酒瓶)に手を伸ばそうとすると妻初(福地桃子)がそれを取り上げる場面。これには理由があった。
(父義時が訪ねてくる直前に初によって瓶子は片付けられる。この場面で義時が話した「私が目指してなれなかった者」とは何か?回収が楽しみ!)
1213(建暦三)年5月3日、和田義盛(横田栄司)の挙兵2日目。和田氏の乱を鎮圧した後、合戦に加わった多くの者たちが泰時の屋敷に集まり、泰時は皆に酒を振舞った。その時、泰時は、「これから酒は、永久に断つ!」と突然宣言する。その理由は、義盛が挙兵する前日、泰時は飲み会で飲み過ぎ、肝心の合戦の時には二日酔いで使い物にならなかったからだと。しかし、合戦は二日酔いだろうと何だろうと戦わねばならない。長時間にわたる合戦で、喉がカラカラに渇いていた泰時は、飲み水を探していた。酔いが覚めそうな時に無性に喉がかわくアレだ。すると葛西六郎という武蔵野武士が、竹筒(水筒)を差し出して、飲めと勧めてくれた。泰時は、勧められるままに飲むと、それは酒だった。しかも、近くにいた尾藤景綱にも竹筒を回した。
(和田氏の乱の最中にも飲んだくれていた泰時)
禁酒するぞと宣言したその舌の根も乾かないうちに、泰時はグイッと酒を一飲みしてしまったのだ。『鏡』は、「人の性、時に於いて不定」、つまり、人の心なんてわからないものだと記している。さらに泰時は、これからは大酒を控えることにしようと禁酒から大きくトーンダウンした(笑)
こうした事を受けての、あの場面だった。
思えば、泰時の妻初は、義時(小栗旬)から謹慎させられ、日々酒に溺れて酔っ払っていた夫泰時に、水を浴びせ、そばにいた朝時と平盛綱(きづき)をビックリさせた”前科”がある。義父義時に対して不信感を募らせる夫泰時に対しても、「あなたは何もわかっていない!」一喝する強い妻初。泰時と初がいつ夫婦となったのかはわからないが、今描かれている実朝暗殺直前の時期には、嫡男時氏(ときうじ)は、15歳位になっているはず。反抗期の息子を抱えた母は、やはり強い!(笑)
(弟朝時も側近平盛綱もビックリな一場面)
実は、初は矢部禅尼と言われる女性で、時期は不明だが、泰時とは離縁し、三浦一族の佐原盛連(さはらもりつら)に再嫁したと言われる。その144で書いた北条VS三浦の宝治合戦では、実家三浦ではなく、北条方として子供達を戦わせている。彼女が再嫁した佐原一族は、族滅した三浦氏の血筋を後世まで繋いでいく。してみると、初は三浦の血筋を後世に繋いだ功労者と言える。