「私、ほんとに夜までいてもよかったんだけどなぁ~?」
「アホか。お前送ったら、楓のとこ行くんだよ」
ゆっくり用意しやがって
おかげでもうすっかりお昼前じゃねーかよ
「フォローですか?他の女を泊めちゃった。でも楓ちゃん、まったく気にしてなさそうだったけどぉ~?」
グサッ
「・・・ 三崎ぃ~ それ、言うかぁ~?」
わぁかってるよ、そんなことは
「まぁでもそれって・・・ 厚い信頼ってやつかな」
「・・・・ ポジティブ~ 」
グサッ
「おまえね、俺と楓には、今まで築いてきたなっが~~い歴史があるわけだよ」
「無駄に長い歴史なんじゃないの?あ、次の信号、右ね?」
グサッ
ちきしょー
三崎の言うこと、いちいち突き刺さるわ
「オレの繊細な心臓が、おまえの言葉で血だらけだわ」
「あ?せん?・・せん、なんだって?ごめーん、よく聞こえなかった~」
「・・・・」
ふざけやがって
このへんで降ろしたろーか
何ていいつつも
ウインカーを出して、右に曲がる
「おい、あとどれくらいでー」
着くんだ?って聞こうと横見たら
え?
なに?こいつ
驚いた顔して、何見てんだ?
「どした?」
「アイツ・・・」
「は?」
「アイツがいる・・・ え?なんで?なんでいるの?」
アイツって・・・
さっきの男か?
「どこにいるんだ?」
「あそこ!自販機の前!あのすぐ横のアパートなの!」
三崎が言う場所を見ると
確かにひとりの男が飲み物を買おうと自販機の前に立っていた
「・・・ あの男か!」
「どうしよう・・ なんでいるの?もしかして私の家・・知ってたのかしら?」
「は?知ってんじゃねーのかよ」
「ううん、だってあの人、ウチに来たことなんてないもの!」
「はぁ~?おい、どういうことだよ」
「なのになんでいるのっ!!?どうしよっ、コタロー!!」
三崎が俺の腕を掴んで来た
どうしようって・・・
「んなもん、帰れるわけねーだろ」
俺はアクセルを踏み込むと、奴が自販機の方を見てる間に
後ろをそのまま通り過ぎて行った
少し離れた場所にコンビニを見つけると
その駐車場に車を停めた
「・・・・ うそでしょ。いつ調べたんだろ?え?ほんっとキモイ!!」
「・・ マジで来たことないのか?一度くらい、送ってもらったとか?」
「ないない、絶対ない!私、つきあった男を自分の部屋にあげたことなんてないもんっ!!送ってもらったこともない!」
強く言い切りながらも
視線はどこを見てんだ?
って感じで・・・
肩が小さく震えてる
顔は真っ青だ
「あー、あれだろ、汚部屋か!片付けられねー女、ってやつ!」
「失礼ね!!」
「・・・・ 失礼しました~・・」
なんだよ
気持ち、楽にしてやろうかと思っただけなのに
誰もほんとに汚部屋だとか思ってねーよ
はぁ~
それにしても、どうすんだよ、コイツ
変な男にひっかかりやがって・・・
「オレが電話に出たの、よくなかったんかなー?」
ハンドルを抱きかかえるようにして
肘をつく
「知らない」
「逆効果だったか?」
「だと思うんだったら、責任とってよ!」
「は?責任っ?」
「そうよ!あんたが余計なことするからでしょ!」
「マジか!・・・ わりぃ」
調子に乗って、あんなこと言うからだよな~
変にかっこつけちゃったかも
「謝るくらいなら、ほんとに助けてよ」
そりゃそうだけど・・・
「助けるってどうやって?」
「今日も泊めてくれるとかー」
「ええっ」
俺ん家に?
今日も?
ん~・・
でもそうだよな
ホテルも怖いかもしんねーし・・
でもなー
いくら俺でも、男の家だぞ?
それもどうかと・・・
「誰か泊めてくれそうな女友達とかいねーの?」
「いない」
・・・ 即答かよ
あー・・・
うん・・・
だとしたら
一番安全なのはそれしかないわな
「よし、わかった」
「え・・ わかった、って?」
「戻るぞ。」
「いいのっ?」
おまえな~
そんな、あからさまに嬉しそうな顔するなよ
なんだよ、それ
ちょっと可愛いって思っちまったじゃねーかよ/////
「それしかねーんだろ?」
「・・・ コタロー」
「惚れんなよ?」
「バカなの?コタロー」
「・・・・・はいはい、ま、ひとまず俺ん家で作戦会議だな ・・・ で?着替えとか買わなくていいのか?」
「あっ 買うっ!!降りよー!」
はぁ~・・・
楓になんて言おう・・・
ってか、楓に言ったら、楓ん家に泊めてくれんじゃねーの?
ダメか?
実家だし・・・
いや、むしろ実家だからいいんじゃねーか?
俺は楓に連絡してみようと思い
スマホを取り出した
「楓からは・・・ 何もない、か」
コンコンコン!
ドア越しに三崎が来ていた
「コタロー、何も買わないの?」
オレが車から降りてこないから
引き返してきたようだ
俺はスマホをそのままポッケにしまうと
車のドアを開けた