いつかける?
私の携帯には、コースターに書かれていた番号がしっかりと登録されていた
ドキドキなんて可愛いもんじゃない
もはや仕事が手につかないほどに、私の頭の中はいっぱいになっていた
このドキドキを楽しもうなんて
考えが甘かったわ
これがね?
メールとか、LINEだったらここまで緊張しなかったと思うのよ
気軽にこんにちは、って・・
うそうそうそうそ
なんて書いて送るわけ?
それもだめだ
だったらいっそのこと、電話の方が
なんて考えてるけど
実際かけてみたら
電話に出るのはマスターなのかもしれない
そうそう
それは想定内
がっかりするだろうけど
想定内だし
それもまた、笑い話にすればー
って私、何を考えてるの!?
このネタを、今度彼と会った時の話題にしようって
さりげなく考えた??
うわー
ひくわ・・
いたいわ、私・・・
「あの~・・ 桜井さん?」
ハッ!!!
突然声をかけられ、デスクの上でつっぷしていた私は顔を上げる
声のしたほうへ
「だいじょうぶ?具合でも悪いの?」
「いいえ、すみません。なんでしょう?」
「これ、急ぎだって。あとこれ、入力ミス、3カ所あったよ?
珍しいね、桜井さんにしては・・っていう凡ミス」
「あ、あぁ・・ すみません。」
遂に仕事に支障まで!!
「少し、コーヒーでも飲んで息抜きしてきたら?」
「ありがとうございます・・」
もうだめだ
こんなドキドキを一日中続けるなんて、無理
とっとと電話してみてしまおう
そもそもつながらないかもしれないし
うんうん
私は、携帯をもつと、席を立った
・
・
・
・
・
「チャンミン、さっき携帯鳴ってたぞ?」
「え?あ、携帯・・・ ここに置いたままだった?」
突然呼ばれたから、慌ててたんだな
不在着信を確認する
「・・ 誰だ?」
知らない番号
放っておけばいいか、と携帯をまた置こうとした途端
手の中で振動とともに着信音が鳴った
表示はまた、知らない番号だ
さっきのー?
どうする?
出る?
出ない・・?
「・・・ はい」
「あ、・・・」
オレは
聞こえてきた声に
電話をとってよかった、と思った
・
・
・
・
・
「おーい、チャンミン、このあとおまえどうする?」
「あー・・ すみません、僕はこれで」
ーーー 今夜も、マスターの店、来る?
ーーー 行く
「ええー?チャンミン、帰るのかっ?」
「はい。ちょっと・・ 約束が。」
ーーー じゃあ、今夜また
「なんだ?もしかしてぇ~?」
「あ、いや。そんなんじゃ・・」
「違うのか」
「・・・・・・・」
「どっちだよ!」
「はい?」
「顔!・・・ にやけすぎ。そうか~ 遂に?
巷で人気の王子も年貢の納め時か」
「ねんぐ?おさめ・・?」
よくわからないけど、そんなにオレ、顔、にやけてた?
・
・
・
・
・
遅くなった、遅くなった・・!!
今日中って言われた仕事でまたもや凡ミスしまくって
なかなか帰れなかった!!
もうほんっと、今日の私はダメダメだった
あ・・
来てる・・
階段の下で彼を待つ女性たちを確認
あの子たちは
どれくらい、彼のことを好きなんだろう?
横を通り過ぎて階段を上りながら
ふと思った
寒くても待てるくらい
好き
その好きは、私の好き、と同じかな?
って、私の好きってなんなんだろう?
なんて考えながら
店のドアをあけると、独特の音が鳴った
ドキッ
「いらっしゃ~い」
といういつものマスターの声
そのまま視線の先に入った
いつもの席に座っている彼が
うわっ
やばいっ
かっこいい
かっこよすぎるっ
なるべく動揺をかくしながら
私のいつもの指定席、奥のテーブル席に座った
・・・・え? そっち?
ようやく入ってきた彼女が
奥のテーブル席につくのを見て
オレが驚いていると
目の前でくすっと笑い声が聞こえた
「なにが可笑しい!」
「別に?・・ 何も」
嘘をつけ!
肩が笑ってる
「あの~・・ ここ、座ってもいいですか?」
「えっ?いいに決まってるー」
やっぱり来たか、と振り返ったオレの目に映ったのは
彼女とは全くの別人で
「キャー、よかったぁー!ダメだって言われたらどうしようかと思った・・」
「ねー?よかったわよねー!言ってみるものねっ!!」
しかも二人だ
今更ダメだとは言えまい・・
もう座っている
うわーうわーうわー
隣に座らせるんだ!?
あー、そうよね
私だって座れたんだもん
・・・ ひとつ置いてだったけど
あの子、若くて可愛いし
そりゃあいいわよねっ
ほっほぉ~
今夜は彼女に氷を食べさせてもらうのかしら?
あー、私ったら
なになに?自分だけ特別だとでも思ってたわけ?
ちょっといい気になってない?
あー、はい、なってました、なってました
「美人の百面相もいいね。・・・はい、いつもの。」
「マスター!?えっ、あのっ・・」
百面相って、私、そんないろんな顔してました?
テーブルに置かれたカクテルを手にしてマスターに問いかける
「あの・・ 私、昨日の支払い分、足りないの払おうかと思って・・」
「電話しなかったの?」
「え?」
・・ あっ!!!!
「しましたよ!!そうだ、マスター!あれ、ありがとうございました!!」
「え?電話したのに・・・・ これ?」
マスターは、人差し指をだして、私と彼の間を行ったり来たり動かした
「これ?ってそんな・・」
「約束したんじゃなかったの?」
「いやいや、そんなっ」
私は顔の前で手を振ると
「ただ、今夜ここに来る?って話はしましたけど・・それだけですよ」
「・・・・・・・・」
「それに今夜は、彼女たちと一緒に飲むようですし」
チラッとカウンターへと視線を馳せた
あ、また話しかけられている
「じゃあ、ごゆっくり」
「あっ、あの、マスター!昨日のー」
「もうもらったでしょ?昨日は2千円」
「え?でも絶対そんなもんじゃー」
「いいのいいの、じゃあね」
行っちゃった
いいの?
じゃあ、遠慮なく・・ ゴチになりますっ!!
「王子は何を飲んでるんですか~?」
「同じもの、飲みたい!!」
「マスター!!」
いやでも目につく
耳にしてしまう
だって、それは目で追ってるから
耳を研ぎ澄ましているから
貴方を視界に入れたくて
貴方の声を聴きたくて
「はぁ~・・」
私も隣に座りたかったな~
でもそれは、しちゃいけないような気がして・・
あそこに座ろうとしたら
怒られるんじゃないか、って
拒否られるのが怖くて
勇気が出なかった
彼女たちみたいに・・・
「王子!好きな女性のタイプは?」
「今、つきあっている彼女は?」
「好きな人とかー」
うわっ
質問攻めだわ
でも・・
店内にいる彼目当ての女の子たちが
みーーんな固唾を飲んで注目している
もちろん、私も・・・・
ゴクンッ
「悪いけど!・・・ 僕は君たちのツレではないですよ?」
うわっ
言葉は優しいけど
口調が厳しいから、彼女たち
すっかり固まっちゃってる
くるっと彼の椅子が半回転すると
彼の長い脚が地面についた
「・・・ 僕は席をうつるよ、どうぞごゆっくり」
そういうと
カウンターにあった自分のグラスを持ち
歩き出した
え?
え?
もしかして・・・ こっちに・・?
いやいや、そんな
そんなわけないわよね
私は視線を外して慌ててカクテルを流し込む
ゴクンッ
でも、コツコツと響く足音は間違いなく近づいてきていて
コトン
テーブルに置かれたグラス
「ここ、いいよな?」
そういうと、ストンっと私の正面に座った
「え?ちょ、ちょっと?」
さっきまでと明らかに口調が違う・・!!
それにめちゃくちゃ注目されてるんですけどっ
カウンターの彼女たちも
店内にいる女性たちも
思いっきりこっちを見ているのがわかります
やばいよ、やばいよ
「なぜ、こっちに座った?」
「は?」
「今夜、ここでって約束してただろ?」
ガヤガヤと騒がしくなった
あちらこちらで、彼女?というワードが飛び交っている
「約束って、そんな・・・」
ねぇ、大丈夫なの?
彼女なんじゃないか、って言われてるわよ?
これじゃあ昨夜のコンビニみたいでー
私はガタっと立ち上がると
「安心してください!彼女ではありませんから!!!」
両手をひろげ
まわりに向かってそれだけ言うと
椅子に置いたバッグを手に取り
「マスター、ツケといてくださいっー」
ダッシュで立ち去った
・・・・・ は?
ーー 安心してください、彼女ではありませんから!!
彼女の言葉が頭の中を反芻する
なんだ?それ
どうして何も言ってないのにオレが振られたみたいになってるんだ?
ポンポン
「はぁ~?」
肩をたたかれ、イラっと振り返ると
「学習、学習。急がないと、ほら!」
そういって店のドアの方を指さされた
「・・・ わかってるよ!」
ガタっ
ガヤガヤと騒がしいのなんて
無視だ、無視
くそっ
こんなにうまくいかないなんて
思いもしなかった
つづく・・・
(素敵な画像、お借りしました。ありがとうございます)
*:..。o○☆゚・:,。*:..。o○☆*:..。o○☆゚・:,。*:..。o○☆
もうね、長くなっちゃってごめんなさいね?
もう限界よね
切って、次にしないとね
そんな感じなんですよ

