「じゃあ、お先に失礼!あなたたちも、初日からぶっ飛ばすんじゃないわよっ?今日は月曜なんだから、残業なんかしないで早く帰ること!いいわねっ?」

 

 

「はぁーーーい」

「夏川チーフ~、お疲れ様でした~」

「お疲れ様でしたぁ~」

 

 

ぷっ

昼休み・・・

初日からぶっ飛ばしてたのは

どこの誰だっけ?

 

そう言えば二階堂さん、すごい剣幕だったけど

何かあったんだろうか?

残業なしで帰るのは、そのせい?

 

 

「森島ぁ~。同期のお前と同じチームで仕事出来るなんて、オレは嬉しいぞぉーー」

 

「笹本・・・」

 

 

男に抱きつかれても・・・ なぁ?

 

「メシでも食ってく?」

 

「いや、今日はやめとく。」

 

 

給料日前の金欠MAX

買い置きしてあるカップ麺だ

 

 

「あ、そういえばこの前、悪かったな、同期会」

 

せっかく笹本に会ったんだ

参加できなかったことを謝ろうと切り出した

 

「・・ん?」

 

「せっかく誘ってもらったのにオレ、金欠で断ったから」

 

「同期会?・・・ あ~ 華ちゃんがやりたいって言ったやつね?」

 

沢井が?

あのとき、確かー

 

「笹本が言い出したんだろ?久しぶりに、って」

 

「いや、オレじゃないよ。華ちゃんから連絡きて、久しぶりにやろうって言われたけど、あのあとすぐにやっぱりまたにしようって連絡がきて・・ 結局やってないから、謝ることないぞ?」

 

「・・・ そうだったんだ・・?」

 

沢井が言い出して・・・

結局やらなかった・・・

ふぅ~ん・・・

 

 

「おまえ、金欠なの?まぁ、今、給料日前だしな」

 

「あぁ・・ 今月来月はまだ、金欠かな」

 

 

給料が出ても、あの人に奢らないといけないし・・・

 

 

「なんかあったの?」

 

「え?」

 

「いや、そんな金欠って・・ あ~おまえ、もしかして、ついに彼女が出来たとか?」

 

 

彼女?

 

 

「いや、ない。友達が結婚したんだよ。だからそれで、まぁ・・ 色々と、な」

 

「友達が結婚?そりゃあ、祝いとか・・ 確かにお金飛ぶよな。」

 

「だろ?」

 

「でもさぁ、その友達の結婚祝い?もう披露宴とかあったの?」

 

「あぁ、この前」

 

「はっは~ん、それで?可愛い子に出会った、とか?」

 

「バカ言うなよ、同級生だぞ?」

 

「いやいや、同級生だってさ、久しぶりに会ったわけだろ?綺麗になってたりして、新たな発見とかさ~」

 

「笹本・・ おまえ、そうなのか?」

 

「まだねーわっ!!」

 

「ハハハッ」

 

「でも同窓会、ってなんかドキドキしねぇ?そんな感じだろ?」

 

「・・・・・・ ないなぁ」

 

「・・ったく!なんなんだよ、お前。はぁ~」

 

「なんだよ?なんで溜息なんか?」

 

「お前に彼女できねーと、オレも出来る気しねーわ。」

 

「なんで?」

 

「なんで?だと?・・・ はぁ~ みんな、息を潜めてお前のこと、狙ってんだよ」

 

 

はぁ~?

 

「ハハハ、ないない。告られた人にはもう断ったし」

 

「断られたからって、はいそうですか、ってすぐ諦められると思うか?お前に彼女できるまでは無理だろ」

 

「・・・ そんなもんか?」

 

「今だって、俺らの会話、皆、聞き耳立ててるぜ?きっと」

 

「・・・?」

 

 

まわりを見渡すと

途端に何人かの女の人たちと目が合った

ような?

避けられたような・・・

 

 

そう言えば あの人・・・

 

エアーで彼氏作ったの、って、まさかこんな理由で?

 

だとしたら笑える

ハハハ・・

 

 

「何がおかしいんだ?」

 

「え?」

 

「いやおまえ、今、笑っただろ?」

 

「笑った?俺が?」

 

「うわ、無意識?・・・・ 珍しい~、何考えてたんだよ?」

 

「・・・・」

 

 

あの人の・・・

エアー彼氏の話?

 

 

「・・・・ 別に何も」

 

「怪しいぞ、今の間!やっぱ、友達の結婚式で何かあったんだろう!!言え!そして俺に女の子を紹介しろ!あ、お前のこと好きじゃない子なっ?」

 

「ハハハ・・ 紹介できるほど仲のいい女の子なんていないから」

 

「・・・ だろうな~。お前の周りはきっと、みんなお前を狙ってる」

 

「なんだよそれ、そんなことあるわけないだろ」

 

「いーや、そうだから。とにかく早く彼女を作ってくれ!!」

 

「・・・ そう言われても・・・」

 

 

オレもエアーで作るか?ハハハ

 

 

「ほんとに、誰もいないのか?あ、じゃあさ、女性同伴で参加しないといけないイベントがあります、誰と行きますか?」

 

「女性同伴で?」

 

「そう、絶対!」

 

女性同伴でイベントって、まさにこの間の隆哉たちの結婚祝いだろ

あの人・・・

抜けてるのか、かっこいいんだか

 

ふっ

 

「あ、今、誰か思い浮かべたんだろ?」

 

「え?」

 

「その子だ!その子とつきあえ!!」

 

「・・・・・・・・」

 

その子、って・・・

 

 

 

「ふたりで楽しそうに何を話してるの~!?」

 

「沢井」「華ちゃんっ?」

 

びっくりした

こいつ、いつも急に現れるよな~

 

 

 

 

「ねぇ、せっかくだから、どこかでご飯、食べてく?」

 

「お!いいね!さっき森島のこと誘ったんだけど断られたとこだったんだよね」

 

「え・・」

 

「よかったじゃん。ふたりで行ってこいよ、じゃあオレ、帰るからー」

 

「え?森島くんっ?」

 

 

うそでしょぉーーー

笹本とふたりでご飯とか

全然魅力ないんですけどぉー

 

 

「どこ行く?オレ、中華な気分」

 

「えー、私、パスタ食べたい。残念。」

 

またにしよう

 

「あ、いいよ、パスタでも。合わせる合わせる」

 

「・・・・・」

 

まぁ、ここでいきなり帰るのも、あからさますぎるか

 

「やった。ありがと、笹本」

 

「じゃあ行こう」

 

しょうがない

こいつと食べて帰るかぁ

 

 

「ね、さっき・・ 森島と何、話してたの?」

 

「あ~ とにかく、早く彼女を作れ、って話してた」

 

「森島に?」

 

「だってアイツに彼女出来ないと、皆、落ち着かないだろ?」

 

落ち着かないって・・

そりゃそうかもしれないけど

出来たら出来たで落ち着かないわっ!!

ってか、むりむりむりっ

ないないないっ

 

 

「でも森島、誰とも付き合う気ないんでしょ?」

 

 

ないはず

最近、そう断ってるって聞いたもの

 

 

「それがさ~、そうでもないみたいよ?」

 

「えっ?そうでもないみたいって?」

 

誰かとつきあう気があるってことっ?

 

「アイツ、最近、同級生の結婚祝いに行ったんだって。そこで誰かいい子がいたみたいなんだよね~、あれは絶対そうだ」

 

「同級生の結婚祝い・・?」

 

 

まさか・・・

 

それが・・・ アヤメ!?

いや、きっとそうだわ

 

森島が女の子の名前、呼び捨てにしてるとこなんて

初めて見たし(聞いたし)

同級生なら納得だわ!!

 

ええええええ

ちょっと待ってよ

 

ここにきて

まさかの、同級生・・・

そこでつき合うとか

 

やめてぇーーーっ

 

 

「とにかく、早くその子とつきあってくれ、って言っといたわ」

 

 

笹本ぉーーーー

なんて余計なことをぉーーーー

誰がそんなこと、頼んだよぉーー

 

 

「そういや、華ちゃんって彼氏いないの?」

 

「いないけど?」

 

「じゃあじゃあ、試しに俺とつきあってみるとかない?」

 

「ないわね」

 

「なんだよぉー、即決かよ」

 

 

当たり前でしょ

私が付き合いたいのは

 

森島なのよぉーー

 

森島快!!!

 

 

「意外といいやつなんだけどな、オレ」

 

「自分で言う?」

 

「お買い得よ?」

 

「どこが?」

 

「・・・・・・」

 

「ないんじゃん!アハハハハ」

 

「ま、・・・ ぼちぼちね」

 

「・・?」

 

「さ、何食べる?」

 

「あ、うん」

 

いい加減、決めなきゃね

 

と、店に入りテーブルに座った途端、運ばれてきていたメニューをようやく開いた