昨夜のことは夢だったのではないか
と考えながらも
身体に奔る鈍い痛みに
やはり現実だったと思い知らされ
会社の通用口で守衛さんにかける挨拶も
自然と優しく明るく大きな声になってしまっていた
すれ違う人たちにも
軽快に挨拶を重ねながら
企画会議室Bのドアをあけた
「おはようございまーす!」
「・・・・」
・・ん?
なんだろう?
皆の私を見る目に驚きの色が見えるような・・・
え?え?
まさか、私・・・
どっか変??
入る部署を間違えたかしら?
と後ずさり
もう一度プレートを見て
今日から榊原チームが籠る企画会議室Bだと確認する
なに・・か
あったの?
「おはようございます!今日からよろしくお願いします」
「おはようございます」
「おはよう」
ひとりが挨拶をしてくれたのを皮切りに、皆挨拶をしてくれたけど
明らかに様子がおかしいような・・・
そのとき
ドアが開き、榊原が入ってくると
皆、一斉に立ち上がった
「おはよー!みんな!!今日からよろしく!!」
「「おはようございます!よろしくお願いします!!」」
空気がピーンっと張った
「じゃあ、早速だけどこれ、見てくれる?」
配って!と榊原が用意した資料を渡され
手分けして皆の手に行き渡るようにすると
やはり何だか視線を感じるような・・・
いつもとリーダーが違うから自分がそんな風に感じるだけかな
そう思ってまた、脳裏に浮かんだ人に
一瞬想いを馳せてしまい
頬が明らむ
榊原チーム初めてのミーティングが始まった
「ちょっといいか?」
短い休憩をとることになった矢先
榊原に声をかけられた
「なに?」
「いいからちょっと」
くいっと手で あっち、って指され
私は榊原のあとについて、会議室をでた
「何よ、どこまでいくの?」
廊下を歩き
喫煙ブースの方までいく
「ちょっと!私、煙草の匂いつくの、嫌なんだけど」
後ろから、榊原に言う
このまま喫煙ブースに連れ込まれたら勘弁だ
「あ、悪い。」
そうか、とばかりに立ち止まると
「じゃあここでいいわ」
そう言って振り向いた
いったい何の話だろう?
「昨日、何かあった?」
「えっ?」
「飲み会、抜けて帰っただろ?ユノと」
「・・・・・・」
なんで知ってるの?
ユノと帰ったこと・・・
「えっ?それってまさか皆知ってるの?」
だから?
今朝、皆の視線が変だと感じたのはー
「いや。2人が一緒、ってのは多分オレしか知らない」
「え・・?」
じゃあ、どうして?
「え?っていうか、なんで榊原は知ってるの?あ、もしかして見てたっ?」
ユノに店、連れ出されるとこー
「で?」
「え?」
「ユノと!・・・ 何もなかったわけ?」
バッ////////
「なっ!! なんでそんなことあんたに言わなきゃなんないのよっ」
「・・・ あ~あ、最悪。バカじゃないの?」
「は?」
「時期、考えろよ。わかってんのか?今、アイツのチームとおまえが所属するオレのチームはライバルなんだぞ?」
「わかってるわよ、そんなこと・・」
ーー 会社では、俺たちのことは内緒にしておいたほうがいいだろうな
ユノが昨夜、言ってた
「もしこっちの企画が何か漏れたりしたら、オレは真っ先にお前を疑うからな!」
ビクッ
「はぁっ?そんなこと絶対するわけないでしょっ!!?」
「まさか付き合うとか言い出さないよな?」
「あー、うん、それはない。わかってる」
ーー つきあうのもお預けだな。あ~あ、りかがオレのチームだったら問題なかったのに・・
ーー ごめんなさい・・
ーー しょうがない。どうしても仕事の資料を家に持って帰ったりするし・・
ーー そうだね
ーー リスクは避けるしかない。無駄に疑われるよりマシだ。
ーー うん
ユノの言うことは至極もっともだった
「どうせこうなるのに、何を血迷ったんだか・・・」
「・・・・・・」
「とにかく!気をつけろよ!」
「・・・うん」
でも気をつける、って何をどうやって・・?
榊原の言葉に、何も言い返せない自分が悔しかった
喫煙ブースに向かう榊原とわかれ
ひとり会議室に入ると
また不穏な空気を感じた
「・・ あのさ、もしかして何か言いたいことあったりするのかな?
これから一緒にやっていくチームメンバーなんだから
もし何かあるんだったらー」
言って欲しい
このままわだかまりを感じながら働くなんて嫌だ
「ほんとにそう思ってるんですかっ?」
「え?」
「ちょ、ちょっと、林っ!!」
「いいじゃないですか、向こうが何かあるんだったら言え、って言ってるんだから!」
ほんとにあるんだ・・?
「なに?なんなの?言って」
会議室内の注目を浴びたのは間違いない
皆、こっちを見ている
「だから、ほんとにこのチームでやっていこうって思ってるんですか?」
「思ってるけど?」
「そんなこと言って・・ 本当はうちのチームの情報を向こうに流すつもりなんじゃないんですか?」
ビクッ
「はぁ?」
え?なに?
「だって今までずっとユノさんのチームだったじゃないですかっ!
ハッキリ言って、今回、向こうのスパイなんじゃないか、って
皆思ってますよ!!」
「・・・・・・・・」
疑われてる・・・
ただでさえ私・・ こんなふうに思われてたんだ・・・
だから皆・・・
「そんなことしない。」
「口ではどうとだって言えますよ!」
なに?
どうしたらいいの?
「なに?おまえたち、そんなくだらない話をしてたの?」
いつのまにか会議室に入ってきていた榊原が声をかける
「チーフ!!」
「しょうがないな・・ 言うつもりはなかったんだが・・・」
そういうと榊原は
私の隣に立ち
ぐいっと肩を抱き寄せると
「こいつはオレとつきあってるんだ。だからそういう余計な心配は一切必要ないから」
あろうことか
信じられない言葉を放った
私が言葉を失っている間にも
室内は異様な盛り上がりをみせ始めた
「えーっ、そうだったんですかっ?」
「全然気づかなかった・・」
「でもさ、だとすれば藤井さんってスパイしないってことだよな」
「そうそう、だっていつも榊原チーフ負けてるし」
「ハハハハハ・・」
なぜか、談笑まで・・・
「・・・ 他に何かいい方法があったか?(ボソッ)」
榊原が耳元で呟いてから
「っるっさいな~ 今度は勝つからなっ!!おまえらっ、死ぬ気で働けっ!!」
皆に檄をとばした
どうしよう・・・
確かに、今ので皆の・・ 室内の空気が一変した
でも
もしこれがユノの耳に入ったらーー
・
・
・
・
・
「え?」
「だから~、りかって榊原とつきあってたのね
知らなかったぁ~」
・・・・ 榊原とつきあってる?
「誰がそんな・・」
「え?ユノ、知らなかったのぉ?昨夜榊原が言ってたのよ
今回はそれで自分のチームに引っぱった、って」
「・・・・・・・・・」
「その顔・・ やっぱり知らなかったんだ?」
「・・・・・・・・・」
「意外と2人、そこまで仲良くなかったのね!
安心しちゃった^^ ね、ユノ、今日の帰り・・え?ちょっとユノっ?どこ行くのっ?
もうすぐ昼休み終わっちゃうー」
・
・
・
・
・
もうすぐ昼休みが終わる
皆、それぞれの部署へとバラバラと入っていく
私はというと
重い足取りで廊下を歩いていた
ぐいっー
「きゃっ」
突然腕をひっぱられ
何番会議室なのかわからないけど
廊下に面した部屋のひとつへとひきずりこまれると
よく知ってる香りに包まれた
「・・・ ユノ」
「しっー」
口に持っていく人差し指がピンっと長くて
一瞬見惚れた
「・・・ 」
逢いたかった・・・
こうして顔を目にすると
自分がどんなに逢いたかったかわかる
昨日逢ったばかりなのに
わかれたのは、今朝早くのことなのに
いろんなことがあって・・・
ふわっと、抱きしめられると
そのままユノの手が
私の頭を包んで
ぽんぽんって・・・
「・・ 何か言いたいことがあるんじゃないかと思って」
ユノ・・
そんなふうにされると
余計に涙が出るって知ってる?
「・・ふぅぇっ・・」
ぽんぽんっ・・
ユノの腕の中・・・
すごく安心する
なんだろう・・・
ひとって
恋をすると
ううん
甘えてもいい相手が出来ると
こんなにも弱くなるものなんだろうか
つづく・・・・
゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚ ゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚ ゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚
あ~あ~あ~
また、こんなふうに、キリが悪いっていうか・・・
ごめんなさいね
まぁまぁ、それより気がつきました?
『近すぎて苦しい。6』
がなくて、これが 7 だということに
6は、アメ限にしようと思ってるんですけど
ちょっと待ってね
書けたときのためにあけとくの