「ユリン?教授に会ったことがあるって・・ それも、向こうで、ってどういうこと?」

 

 

僕は聞かずにはいられなかった

ユリンの口から写真に写る教授を見たと言われ

衝撃が走ったのだ

 

 

「ユンホ・・ 私・・ 少しずつだけど何だか・・だんだん思い出してきたわ・・」

 

 

ユリンは、僕の顔を見ながら

それでも時折遠くを見つめるように

何かを一生懸命考えこみながら

記憶から言葉を絞り出すように話し始めた

 

 

「私がユノユノ皇子の妃になるためにトンバン王国へと入り

宮殿へと向かう途中・・ 何者か・・ 賊に襲われ

供の者たちが、次々と剣で斬りつけられ、命を奪われていく様

今思い出しても身の毛もよだつ・・・恐ろしい光景だったわ

私をかくまおうと逃がして犠牲になって行く者たち・・

私はとにかく逃げたわ、ひたすら走って走って・・

もう、無我夢中だった

すると突然、何者かに腕を掴まれ、引っ張られたの

最初はそのとき、もうだめだ、俗に掴まったんだと思ったわ

でも、顔を上げた私の目に写ったのはそう・・ この方だったの!」

 

 

ユリンがもう一度、写真の中の教授を指差した

 

 

「・・・ それで?」

 

 

僕はユリンを促した

 

 

「これを持て!と・・ 石のついたペンダントを渡され、大丈夫、きっと向こうで私を助けてくれる人がいるから、って・・・。

落ち着いて、こっちに帰りたくなったら、この石を握り祈るようにって

そうすれば、私の戻りたい場所へ戻れるから、って・・・

そのとき、この石を返してくれたらいいから、必ず会えるところで待ってるって・・」

 

 

「・・ 石のついたペンダント?」

 

 

 

僕が問うと、ユリンは首元から、ペンダントを取り出し、見せてくれた

確かに石がついている

 

 

「でも・・・ 私、向こうでこの方に会えなかったわ?

と言っても、宮殿から外へ出ることがなかったから・・・

どこにいらっしゃるのか・・・」

 

 

どういうことだ?

 

教授は、ただ旅に出ているだけではなかったのか?

ユリンのいた世界に?

 

いやいや、普通に考えてそんなことー

 

 

・・いや、そんなことが起きてる

 

実際、僕の目の前にいるユリンがそうなんだから

 

それにもうひとりー

 

 

「私・・ ユノユノ皇子をお助けしなければ、と強く思って、向こうへと戻ったのに

向こうでは私は必要とされてなくて・・・

今度はあなたを想ってまた、戻ってきてしまったわ

あの方にこの石を・・ペンダントをお返ししなくてはならなかったのにー」

 

 

僕はユリンを抱き締めた

 

そうか・・・

この石がついたペンダントが

ここに・・ ユリンが持っている限り

教授はここへは戻ってこれないのか

 

 

「ねぇユンホ・・ 私、あの方にお返ししなくてはいけない・・」

「待ってユリン。今は・・ 考えないで?せっかく会えたのに、君はまた僕の前から消えようとしているの?行ってしまうの?僕に会いにきてくれたんじゃないの?」

 

「・・・・・・」

 

「僕がどれだけ・・ 君に会いたかったか

また会えて嬉しいか

今、どんなに喜んでいるか、この心臓の高鳴りをー」

 

「おぉ・・ユンホ・・」

 

 

彼女が瞳を潤ませ

僕を見つめる

 

僕はそっと、彼女の手をとると

心臓に重ねた

 

 

「すごい・・・」

 

 

そういってユリンは

僕の手をとり

 

自分の心臓へと重ねる

 

 

「ユリン・・」

 

 

その手の平に触れる膨らみに

僕の胸はますます高鳴り

 

その高鳴りを知って

彼女の鼓動もまた、早く脈打つ

 

 

「ユリン・・」

 

 

僕がまた彼女の名を呼ぶと

顔を上げ

僕の瞳を見つめ

 

 

「・・ ユンー」

 

 

その唇が僕の名を呟くー

 

 

のを

 

 

僕はたまらず塞いだ

 

 

 

 

もう

 

 

我慢が出来なかったんだ

 

 

たとえ、今、目の前にいるこの愛しい人が

この世で添い遂げることが叶わぬ相手であろうが

 

この想いを止めることなんて

 

 

誰にもできないんだ