「だぁ~ってぇ~・・ 最初の頃はね?・・・温度がね?あ~ふたりのね?同じだな~って感じてたんだけどね?それが最近はさぁ~・・・」

 

 

ふたりの温度・・・

 

なんかわかる気する

 

 

「より惚れた方が負け、ってやつですね?」

 

 

思わず口を挟んでしまった

 

するとお姉さん、私の方を一瞬見て

そしてまた、空を見ながら

語り始める


 

「ん~?あぁ~、うん・・ それもあるけど・・ もっとね?なんていうか~・・・」

 

 

「ちょっと待て!おまえ、ここに来る前、何杯飲んだ?」

 

 

「えぇ~?何杯って・・ ん~っと・・」

 

 

マスターが突然、お姉さんが飲んでいたグラスを取り上げると

氷入りのたっぷり水の入ったグラスをかわりに置いた

 

 

お姉さんは、気づかないのか

それを手に取り、口に持っていく

 

ぐびぐび飲んじゃってる・・・

 

え?

もしかしてすごく酔ってるの?

 

 

 

「・・・ とにかく!・・ 疲れちゃったのよね~」

 

 

「うわ、泣き出した。最悪。彼女、気をつけて、もうすぐこいつっー」

 

 

え?

気をつけて、って何?

 

 

「・・うっ、気持ち悪い・・・」

 

 

「えっ?気持ち悪いって、お姉さー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

確か、この店

 

 

僕は勢いよくドアをあけると

 

店内を見回す

 

 

カウンターで飲んでると言ってたが・・・?

 

 

 

そこには誰の姿もなく

 

 

 

僕は中へと入っていく

 

 

 

誰もいないのか?

 

 

マスターは?

 

 

 

 

と見渡したボクの目に入って来たのはー

 

 

振り返ってよく見ないとわからないような店内の端っこの席

壁際に、座ったふたり

 

手前から男の方が女性に覆いかぶさるようにしてる・・!?

こんなところでいったい何を・・・

 

 

ハッ!!

 

まさかっー

 

 

「おいっ、何をしているっ!?」

 

僕は駆け寄って男の肩をぐいっと彼女から引き離した

 

 

 

「え?」「は?」

 

 

 

 

男の影から見えた女性は

彼女とは全くの別人だった

 

 

 

 

 

「・・・・・・・ /////////すみません、人違いでした。」

 

 

 

嘘でしょうっ!?

恥ずかしいっ!!!

 

 

 

 

すみません、すみません、と何度もお辞儀をしながら

カウンターの方へと歩いていくうち

 

 

 

「あ、いらっしゃいませ~」

 

 

マスターが現れ

 

その後ろから、口元にハンカチを当てて歩く女性に付き添うようにして彼女が現れた

 

 

 

なにごとだ?

 

 

 

僕の視線に気づいたのか

 

 

「専務!」

 

彼女がこっちへと歩いてきて

 

 

「すみませんけど、こいつ、タクシーに乗せてきますんで、それまで待っててもらえます?」

 

 

かわりにマスターが彼女の後ろへ回った

 

 

「ちょっと慎吾!私なら大丈夫だから・・。2回吐いたら楽になってきたし。」

 

 

女性が顔を上げて断っている

 

 

 

 

2回も吐いたのか?この女性・・・

 

 

 

 

「いいから!おまえはもう帰るんだよっー」

 

 

マスターがしつこく女性を連れて行こうとするも

女性はそれに逆らうように手を振りほどき

 

 

「やぁ~だ、ってば。だって、ルナちゃんの彼氏さんが来たんでしょう?お話してみたいものっー。ねぇ~?ルナちゃんっ、いいでしょう?」

 

 

なんて言いながら、こっちへと歩いてくる

 

 

 

・・・ ルナちゃん?知り合いか?

 

 

 

「あ、えと・・ 彼氏というわけではー」

 

 

「彼氏さん!この子、いい子ですよ?だって私、今夜初めて会ったのに~、さっき・・・」

 

 

そこまで言うと、女性は僕の顔を見上げ、かたまった

 

 

初めて会ったと?

知り合いではないんだな?

 

 

「すっごい綺麗な顔・・・」

 

 

 

「・・・・・・・・」

 

 

まじまじと見つめられ、穴が開きそうだ

 

 

僕は目を伏せ、顔を背けると

 

「おいっ、見てないで助けてくれてもいいのでは?」

 

小声で隣の彼女にそう囁く

 

 

「・・・ 見たことある。この顔・・・。 どこでだろう?・・・ん~」

 

「はいはい、酔っぱらいはやっぱり帰ろうな。すみませんね、今、連れ出しますんでー」

 

 

マスターが女性を連れ出そうとするのが

必要以上に性急な感じだが

まぁ、女性の酔っぱらいは早く帰ったほうがいいのは間違いない

 

僕のことを見たことがある

 

なんてよく女性から言われるセリフだ

 

 

「ほら、行くぞ?」

「待ってよ、慎吾・・ 今、思い出せそうなのに・・」

「気のせいだろ、勘違い勘違い。はい、出るぞ?」

 

店のドアが開き

外の雑踏が聞こえてきた

 

と思ったそのとき

雑踏に紛れるようにして耳に届いた女性の声

 

 

「あ!思い出した!壮士の部屋の写真立てだ!」

 

 

 

壮士?・・だと?

 

 

 

僕は慌ててカウンター席の椅子から立ち上がると

ドアの方へと向かった

 

 

「専務?どうかしたんですか?」

 

 

背中に彼女の声が聞こえるが

それよりも、僕は気になった

 

 

「ちょっと待って!あなた、・・・・ 三木の知り合いなんですか?」

 

 

 

 

僕の言葉に、マスターの身体が強張った気がした

 

え?マスターも?

 

 

「あ~、くそっ! だから早く帰れって言ったのに・・・」

「なんで?慎吾、壮士の友人だって言ってないの?だってこの人、壮士のー」

「ちょっと待て待て。お前はもう何も言うな」

 

 

ふたりは店のドアのところで言い合いを始めた

 

 

 

「・・・ どういうことです? お二人とも、三木の知り合い・・いや、友人なんですか?」