「なに?翔琉、何だかご機嫌?」

 

「いーや、別に」

 

「なんだよぉ~ 教えてくれよ、何かあった?」

 

 

俺は、まとわりつくように隣から覗き込んでくる皆川に

向き直ると、正面切って言い放つ

 

 

「・・・皆川、おまえ、岩田さんに何か言っただろう」

 

 

「皆川って、怖いなぁ~。いつもみたいにリョータって呼んでくれよ。お前が俺のこと苗字で呼んでくるときって怒ってるときだろ?え?岩田さん・・・ あー!お前の同級生の!なに?あ!翔琉の高校時代の話(はな)っーんぐっ」

 

 

言いかけた皆川の口を、広げた左手の 親指と人差し指の間で塞いでやる

 

 

「いいか?今度あいつに何か変なこと吹き込んだら、もうお前の頼みは二度と聞いてやらねーからな」

 

 

「(ぶんっぶんっぶんっ)」

 

 

首を縦に大きく肯く皆川の口を自由に解き放ってやる

 

 

「・・・ はぁ~・・ 苦しかった・・・」

 

「ったく、お前のせいで心臓止まるかと思ったわ」

 

「いやそれ、俺のセリフだろ!・・ってか俺は別に岩田さんが翔琉と同級生だって聞いたから、翔琉が高校の頃好きだった子のこと、いまだに引きずってるんだって~ 誰だか知ってる?って聞いただけなのに・・」

 

「それが余計なことだって言ってるだろ?・・・ったく。お前とあんな飲むんじゃなかった・・・」

 

 

我ながら不覚・・・

酔って昔の話をするなんて・・・

 

 

「そういや、同窓会あったんだろ?会えたりしたのか?」

 

「なっ!?」

 

「岩田さん、『同窓会あるから、そこで会えたら話してみたらいいのにね~ もし独身だったら今の翔琉に絶対堕ちるだろうにね』って言ってたぞ。どうだった?同窓会ってなんだかわくわくするよな~」

 

 

そんなこと言ってたのか、アイツ・・・

 

 

「な?な?会えたのか?もしかして、岩田さんの友達だったり?だから余計なこと言うな、って?」

 

 

ギロッ

 

 

「だぁまぁれっ!!」

 

「・・・・ はい」

 

「どっちにしろ、昔の話だ。まだひきずってるわけねーだろ。何年経ってると思ってんだ?」

 

「じゃあなんで彼女作んないんだ?お前を飲みに誘ってくれってオレ、すっごく頼まれてるんだぜ?」

 

「・・・ めんどくさ」

 

「めんどくさ、って だったらおまえ、あっちの処理とかどうしてんの?そんなかっこいいのにもったいな・・」

 

「み~な~が~わ~~~~?」

 

「あ、ここっ、ここで社長さんとこに行く手土産、買って行こう!なっ?入るぞっ、すみませーーんー」

 

「・・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ピコンッ

 

 

ピコンピコンッ

 

 

 

 

携帯が鳴って確認すると

 

 

え?

 

宮下くん?

 

なんで・・・

 

あ、この間、グループ作ったから、そこから私の、わかっちゃったんだ?

 

 

 

ーー こんにちは!突然だけど、今日のお昼って予定ある?

 

 

今日のお昼?

え?

どうして?

 

 

ーー (返信) どうしたの?

 

 

ピコンッ

 

ーー 岩田の会社って、○○にあるって言ってたよね?今、近くまで来てるんだ

 

ーー よかったらランチでも一緒にどうかと思って

 

 

ランチ!?

 

うわぁ~

マジで?

 

高校時代の自分に教えてあげたい

宮下くんにランチに誘われてるよ~って

 

 

ーー(返信)いいよ、どこにする?

 

 

ふたつ返事でOKしちゃうのは

昔惚れた弱みよね

 

 

ピコンッ

 

ーー ここ、どう?近い?

 

宮下君から添付して送られてきたお店、行ったことある

 

ーー(返信)大丈夫。わかるし近い。

 

ピコンッ

 

ーー じゃあ、お昼に。待ってる

 

ーー(返信) 了解

 

 

 

大人になった今って

 

こんなに簡単に約束できちゃうんだなぁ~

 

不思議だ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「岩田!こっち、こっち!」

 

 

 

店内に入ると、宮下くんが声をかけてくれて

私は迷わず席に着けた

 

 

 

「びっくりしたよ~ 急に」

 

 

 

いらっしゃいませ~

とおしぼりと水を持ってきてくれた店員さんに

B定食で、と注文すると

 

「あ、宮下くんは?」

「じゃあ、同じものを」

 

何も聞かずに先に頼んでしまうのは、おひとりさまが長くて染みついた癖なのかもしれない

とちょっと反省した

 

 

「この間、あのあと、高瀬のやつ、大丈夫だった?かなり酔ってたみたいだけど・・」

 

「あぁ~・・・」

 

 

あの、酔ったフリしてたやつね?

くすっ

 

「大丈夫大丈夫、全然平気」

 

なんなら、あのあと、飲みなおしたくらいだから

ということは黙っておかなきゃね

 

「そっか。仲良さそうで安心したよ。結婚はない、って言ってたからうまくいってないのかと思ってさ」

 

「え?心配・・ してくれたの?もしかして・・」

 

「そりゃするでしょー。大事な元クラスメイトだし?」

 

 

にこって優しい笑顔

 

あ~、私の好きだったやつだ・・・

 

大事な元クラスメイトかぁ~

 

くぅーーっ

宮下くんが結婚してなかったら二度惚れするところだったわ

 

 

「それにしても、岩田と高瀬がつきあってるのには、びっくりしたな~ 実はオレ、高校のとき、岩田のこと好きだったんだよね、ハハ」

 

「・・・・・・」

 

 

 

は・・・?

 

今、なんて言った?

 

高校のとき、好きだった、って・・?

 

 

「ちょ、待って?宮下くん、高校のとき好きだった、って・・え?嘘でしょ、だったらどうして私の手紙・・」

 

「え?手紙?もらってないけど?」

 

「ええっ?だって私、ちゃんとー」

 

 

 

ガタガタガタッー

 

 

そのとき、店内で誰かが席を立つ椅子の音がして

バタバタと近寄ってくる足音・・

 

 

「ちょっと、岩田さんっ!今、高瀬さんとつきあってる、って言いましたっ!?」

 

 

ギョッー

 

呼ばれて振り向いて青ざめる

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・ 会社の子たちだ・・・・