オススメ:★★★★★
青来有一。
失礼ながら、作家としては決して有名ではないと言ってよいと思います。
2000年に第124回芥川賞を受賞し、その後地道に創作活動を続けてきました。
本作は、現段階での彼の作家活動の集大成と言っても過言ではない作品に仕上がっています。
舞台は長崎。
タイトルが示すように、長崎への原爆投下を中心にして、
空間的、時間的にその周縁の人々の生を丁寧に描き出した全6編の短編集です。
各編のタイトルも、・釘・石・虫・蜜・貝・鳥と漢字一文字になっていて、
静謐さを感じさせる構成になっています。
僕は、全編に流れる通低音として「祈り」があるのではないかと思いました。
過去に傷を背負いながらも時に淡々と、時に感情的に生きていく人々。
そういった人々の「生」に対する「祈り」ともいうべき思いを、
非常に丁寧な筆致で描き出していると思います。
戦後生まれによる戦争をテーマにした物語としては、 『夕凪の街桜の国』 (こうの史代)
(←これもいずれ取り上げたい傑作マンガです。映画化もされましたね)に並ぶ名作だと思います。
近年読んだ小説の中でも、五本の指に入るほどの傑作です。

