『爆心』 (青来有一)

『爆心』 (青来有一)


オススメ:★★★★★


青来有一。
失礼ながら、作家としては決して有名ではないと言ってよいと思います。
2000年に第124回芥川賞を受賞し、その後地道に創作活動を続けてきました。
本作は、現段階での彼の作家活動の集大成と言っても過言ではない作品に仕上がっています。

舞台は長崎。
タイトルが示すように、長崎への原爆投下を中心にして、
空間的、時間的にその周縁の人々の生を丁寧に描き出した全6編の短編集です。
各編のタイトルも、・釘・石・虫・蜜・貝・鳥と漢字一文字になっていて、
静謐さを感じさせる構成になっています。

僕は、全編に流れる通低音として「祈り」があるのではないかと思いました。
過去に傷を背負いながらも時に淡々と、時に感情的に生きていく人々。
そういった人々の「生」に対する「祈り」ともいうべき思いを、
非常に丁寧な筆致で描き出していると思います。

戦後生まれによる戦争をテーマにした物語としては、 『夕凪の街桜の国』 (こうの史代)
(←これもいずれ取り上げたい傑作マンガです。映画化もされましたね)に並ぶ名作だと思います。

近年読んだ小説の中でも、五本の指に入るほどの傑作です。



『告白』 (町田康)

『告白』 (町田康)

おすすめ:★★★★★


まず、最初に断っておくと、僕は町田康のファンです。

でも、でもでも、僕が彼のファンであるということを差し引いても、

この本はまごうかたなき「傑作」です。

50年後、100年後、日本文学史を振り返った際にも、

時代を代表する一冊として必ず名前が挙がるでしょう。


実際にあった大量殺人事件の犯人を主人公に、

独白体で物語は進むのですが、その語り口が非常によいのです。


町田康の文章は、「語り」が基本にあります。

まるで息づかいまで聞こえてくるかのようなライブ感。

それが町田康の文章の魅力です。


しかし『告白』では、そこにぴんと張りつめたような

微妙な緊張感が漂います。

主人公が狂うその瞬間。

怒濤の展開。

最後の主人公のつぶやき。


今思い返しても、鳥肌が立ちます。


こんな本に出会うことは滅多にないのですが、

たまにこんな出会いがあるから読書はやめられません。