姑息にせっせと移植中 -12ページ目

姑息にせっせと移植中

二分あれば読めるショートショート

ジョボボボボ…

…コッ!

「あら、ポットのお湯が
切れちゃったみたい。
さっき沢山沸かしたばかりなのに…」

「ふふふ 丸山さん、まだまだね…
今日は右斜め30度とみた。」

…コッ!
…コッ!
ジョボボボボ…

「あーん、また やられたあ…」

「無理ないわ。
このポットのフェイント機能を把握する
までは誰しも2年はかかるもの…」

「…やっぱりいらない、
先輩、絶対にいらないですよね?
こんな無駄機能。」

「うふふ、私も新人の頃
同じ事を言ったっけ。
…いい?
このフェイント機能のおかげで
毎日退屈なだけのお茶汲みに
変化を与えられ、
こうして会話が生まれる。
…丸山さんにもじきにわかるわ。
コミュニケーションの大切さが。」

「…あの、先輩。 もう一度だけ
教えてもらっていいですか?
他のポットなら重さで中の量は
だいたいわかるのに、何故このポットは
わからないのか、
どうしてポットの重さ自体まで
変化するのかを…?」

「丸山さん、何度も言ってるでしょ?
このポットは二重構造で
中の水を移動させる事で
重さに錯覚を与えてるだけなんだって。
例えば…片手で20キロの荷物を
頭の上まで持ち上げるのと
両手に10キロずつ、
腰の高さまで持ち上げるのと
どっちがしんどい?」

「理屈はわかってても
どうしても納得できないんです!
…だってだって
同じ量でも毎回毎回
明らかに重さが違うんですもの…」