「ねぇ、僕のこと小説に書いてよ」

大して親しくもない男性と電話して、開口一番挑発される。マッチングアプリの自己紹介で、小説書いてますと載せた私の情報を鵜呑みにして、居丈高になってる男。

「わかった」

下卑た男の笑いを聞きながら、私はいずれ消滅する関係を確信し、この男を徹底的に落としてやろうと思う。

「そんなことより、いつ会う?」

男は私の変化しつつある気持ちを露ほども気づかず、話を転換させる。

「んー。しばらく仕事忙しいんだけど、来週の週末なら都合つけられるかも」

私は思ってもいないセリフを吐き出す。来週の週末は既に仕事の会議が入ってるので、会う予定はキャンセル確定だ。

「じゃぁさ、行くお店考えとくからさ。また連絡ちょうだいよ」

声聞けて嬉しかった。色っぽい声してるね。

男は電話口で囁くように語りかけ、また不吉な笑い声をたてながら電話を切った。

私は怖気が走った為、電話に触れていた耳を何度もこすり、怖気を振るい落とす。

アプリ上に掲載されていた男の薄幸そうな顔を思い出し、この男と肌を合わせ唇を吸い合うことを想像すると、運気を全て吸われる気がした。

男の名前はI。

職業は営業だった気がしたが、興味がないので忘れた。ふと魔がさして連絡をとってみたが、会う価値はない男と判定をする。

私は見栄えが普通より上で、男好みの体型をしている為、写真だけ掲載すると恐ろしい数のアプローチが来ることがわかった。私は自分のページのいいねの数を見て、ほくそ笑む。

男は離婚歴がある。離婚歴自体は気にしないが、この男なら納得できると直感が告げる。男はLINEのレスポンスが非常に早く、実は無職なのではと思わせる。全て返してる私は、仕事の要領がいいだけ。

さて、男をどう料理してやるか。

さて、その前に。

私は本当にマッチングアプリをしているでしょうか。