またひとり素敵な女優さんが旅立ってしまいました。私の大好きな女優さん、江波杏子さんは大映映画の女賭博師で人気を博したスターです。私の事務所の社長だった大石は大映の監督をしていたので、江波さんのお話をしていました。その頃のこと、誰をお竜さん役にするか、候補は2人に絞られ。もう1人の女優さんは、やりたくないと断ったため江波さんが女賭博師の主役の座に決定したそうです。その当時、江波さんは10人部屋の女優さんでした。10人部屋っていうのは、映画界でトップスターの下にいる女優さんたちのことです。この中に、運が良ければスターになれる可能性があるスター候補生の人たちですが、スターになれる人は滅多にいません。江波さんは強運があったのでしょうね。
江波杏子さんは大映の先輩です。私も大映の演技研究所で演技を学び、スターになるためのスターシステムで育てられました。旧大映が倒産したあとのこと。私はフリーで日活に出演、活躍していたため日活の女優だと思ってる方も多いのではないかしら。日活の映画館に閑古鳥が鳴いていた頃、映画館に大学生など若い観客を満杯にしたことで、マスコミ各社が「原悦子は日活の救世主」と書き立てたからでしょうね。実は大映出身です。話をもとに戻しましょう。
江波杏子さんは時々、事務所に訪ねてこられました。私とスケジュールが合わなくて会えずじまいでしたが、私のことを「良い女優さんね」と誉めてくださって、会いたがっていたそうです。私も江波さんとお会いしたかった。それがとても悔やまれます。心よりご冥福をお祈りいたします。