その日、私は映画の撮影のため日活撮影所にいました。撮影も無事終わり帰ろうとしたとき、所長から応接室でお待ちくださいと言われました。また何か企んでいるなと思いました。やって来たのは初めてお会いする監督でした。挨拶すると、すぐに次回作の話を始めたので、「待ってください。仕事の話なら事務所を通してください。監督と直接会って話をしたという既成事実を作り上げ出演を決めさせるのは、やめていただきたい」と席を立つと、監督は「これから日活は映画をアジアに輸出しようと考えている。だからラブシーンのからみを、前張りを外し本番をやって欲しい」と言うのです。これは、あの「蛙の物まね名人」の話と同じです。この話ですべて理解しました。根本氏がこれから進もうとしているのは映画製作ではなく、AVを作ろうとしていると。