恐い話① 遠藤君
とある蒸し暑い夏の夜
山中にポツリとたたずむ野球部の合宿小屋
就寝時間まで暇をもてあました部員たちが集まり
いつの間にか怪談大会が開かれていた。
田中:「俺さ、死んだ人と話が出来る電話番号を知ってんだよね。 」
遠藤:「え~、何だよ、ずいぶん使い古されたネタじゃん…。」
北見:「あはは、懐かしいくらいですね」
田中:「いや、マジだって! 先輩から聞いたんだけどさ、実際喋った事ある奴もいて」
と、田中はその番号が本当にあの世に通じると言って譲らない
遠藤:「じゃぁ俺かけてやるよ。ホントならちょっとワクワクするし」
部屋に備え付けの古ぼけた電話機から、田中に教えて貰った番号を無造作にかける
プルルル・プルルル
ガチャ
電話:「ぁ…ぁ………ザーーッ
ザーッ」
---つながった!!---
けど、何言ってるのかは聞き取れない。
いつまでたっても聞こえてくるのは酷い雑音だけ。。
何だか薄気味悪くなってきて、電話を切ってしまった。
田中:「誰か出たのか?」
遠藤:「あぁ…でも、雑音が酷くて。
聞こえてくるのはザザーっていうノイズ音ばっかだったよ」
結局、"あの世"とやらと通じたのかどうかも分からず
この田中の話は終わりとされて、次だれが怪談するかと
みんなでやりとりをしていた
そしたら、そこに さっき使った電話機が
プルルル・プルルル ・・
遠藤:「おぉ…い、さっきのコールバックか?」
田中:「この部屋の電話にか?」
嫌な予感がしたのか、遠藤は気持ち悪るがって受話器を取ろうとしない。
代わりに田中が受話器を取った
田中:「はい、もしもし。」
電話:「ザーッ… ザーーッ… ぁ… …
ザーーッ」
田中:「あの、すいません、ちょっと良く聞こえないんですけど」
電話:「ガチャ…」
田中:「切れた…。
電波悪いのかな。。。 」
遠藤:「・・・・」
みんなが目を合わせて、いぶかしんでいると
そこにまた、
プルルル・プルルル ・・
北見:「僕が出ますよ」
と今度は北見が受話器をとった。
が、すぐ切れてしまった。
・・・・
あれ・・・。
遠藤の顔色が
「おかしい」です。
青白い。。。
田中:「遠藤? お前、どうしたの? 何か変だよ。」
遠藤:「ご…ごめん、何かさっきから少し気分悪い。。」
北見:「大丈夫ですか? この部屋蒸しますし、僕ちょっと飲み物取ってきますよ」
と、席を立った
遠藤は妙に不安になってしまい、田中に質問した
遠藤:「あ・・・ねぇ、そう言えばさ、電話かけた人はその後どうなったの?」
田中:「えぇ?
そこまで知らないな。実はこの番号も、実際に試したのは今日が初めてで・・」
遠藤:「・・・」
田中:「なんか、ホントに大丈夫か?」
遠藤:「・・・」
北見が戻ってきた
遠藤に持ってきたお茶を差し出しながら
北見:「どうぞ、ところでさっき来てたのは誰ですか?」
遠藤:「えっ?」
田中:「? 誰も来てないぞ。どうかしたか?」
北見:「来てましたよぉ。
聞き慣れない声でしたけど、廊下までしっかり聞こえてましたよ?
遠藤さんの彼女さんですか?」
遠藤:「い・・・意味わかんねぇよ。連れてくるわけねぇし
大体、お前が出てってから、この部屋に誰も来てねぇよ」
北見:「そうですか。おかしいなぁ、遠藤さんと親しそうに喋ってるのが
確かに聞こえてたんですが。。。いや、ホントですってば」
遠藤:「・・・」
田中:「うーん」
と、そのとき
プルルル・プルルル・・
…
なんだか薄気味悪くなり、今度は誰も受話器を取ろうとしません
しかし、いつまでも鳴り止まないので、
とうとう遠藤がその受話器を取ると
電話「…なんで切ったの……」