リドリー・スコットの新作を妻と共にみる
この映画の短所、致命的に不味いとこは、今更前バブル時代の贅沢さはもう我々にとってはゲップしか出ることはない食傷気味の『画』であること
ただただため息が出るようなヴィスコンティ作品のオマージュとしてのイタリア原風景を映す美しい映像を期待していたい。
商業映像としてのリドリーの場面転換での色彩感覚は、たしかに見事で敬服するし、よく作りこまれていて170分にも及ぶ映像時間に退屈はなかった。
だが、痩せても枯れても天下のリドリー・スコットである。ヴィスコンティ、タルコフスキー、キューブリック亡き今なんとなく間違ってその先を期待してしまう。
フランシス・F・コッポラのゴッドファーザーpartⅡのような秀作に並ぶ色調を期待してしまうのだ。
この映画の長所は、何といってもレディ・ガガの衣装!!これはすごい。突き抜けている。2周、3週回って数着は何とはなしに無造作に着てるのだがこれだけでもアカデミー賞もんだ。演技も良い。事前ヤフーレヴューで指摘されていた―下卑た浪速の大阪のオバちゃん体形に加えてセリフまわしに安っぽい感情まかせの情けなさを載せてゆく哀れさ、惨めさを正確に演じきってた。ガガって本職ミュージシャンだよな?!
アル・パチーノの演技もよかった。七十過ぎの老醜たっぷりの血管ボロボロ感がフィルムによく焼き付けられてる。
えげつないバブルの頃の日本のAVを彷彿とさせる偽りにみちたギラギラ装飾は、ある意味的を得ているのかもしれないが、そんなリアリズムはもはや1秒でも1瞬でも感じたくない。ガガ演ずるパトリツィアとドライバー演じる機械的性交映像シーン―これも不快極まれりで私なら話の脈絡が繋がろうが繋がるまいがこの部分オールカットと断ずる。汚辱だけが連想されるドブの水を見る必要はいっしゅんも無い!
