いつもご覧頂き誠に有難う御座います。
ネオスタンダード白山店 店長兼、コロッケ48の松本です。
私の事は嫌いになっても、コロッケの事は嫌いにならないで下さい。
それでは最終話。
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大将の意外すぎる返答に、私は息をするのがやっとだった。
体は固まり、止まっていた汗が噴き出してくる。
しかし、何も出来ない。
動く事すら出来なかった。
おそらく瞬きすら出来なかった筈だ。
本当に時間が止まってしまったかの様な錯覚に陥ったが、
突然泣き始めた蝉達の鳴き声で、時間は再び動き始めた。
そして、言ったか言わないか解らない程の声で大将はこう言った。
「券売機に、冷やしコロッケは無いかい?」
私は力強く・・・
そう。 力強く答えた。
「ありません。」
大将は、大きく息を吐きながら、重たそうな瞼をゆっくりと閉じた。
「そうか。 ないかね・・・。」
閉じた瞼を大きく揉み、暫く考える風をして大将は続けて言った。
「では、お兄さん。冷やしたぬきに、コロッケをトッピングしたらどうだろうか?」
大将の視線の先にあるカウンターには、
ジュエリーを並べたかの様に、まばゆい光を放つコロッケがあった。
その後の事は、私はよく覚えていない。
残っているのは、一枚の写真だけだ。
冷やしコロッケそばとは一体何だったのか?
この写真がその時の物なのかも、私には解らない。
明確な答えは何もない。
ただ、あの日、あの夏に、何かがあった事だけは確かなんだろう。
この話がいつの事だか解らないが、何故だかふと思い出した。
今もあの時と同じ夏の季節だ。
道行く学生、走り回る子供達、蝉の鳴き声も何も変わらない。
空を見上げたら急に涙が出て来た。
そうだ。 今日はコロッケそばを食べよう。
私は、いつもは乗らない埃だらけの車に乗り込み、
キーを力一杯に捻った。
fin
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