今回は淡水二枚貝の繁殖に挑戦しました。
敷地に池を持つ人は二枚貝を放り込んでおくだけで増殖する、という話は時々聞きます。
しかし多くの人は庭に池なんて掘れない……
「マンションのベランダで、小学生でも二枚貝を殖やす術」
はないかと思い増殖実験をしてみました。
●知識ほぼゼロ
●低予算
●省スペース
●なるべく手間要らず
をモットーに淡水二枚貝の養殖を試みました。
使用するのはドブ貝。
大喰らいのドブ貝さえ制御できれば他の二枚貝もいけると予想して開始。
ドブ貝の親(左)と子供(右)
親貝は殻長約10㎝ 稚貝は殻長約4㎜
ドブ貝飼育設備はこれ。
ドブ貝飼育容器
容器(縦40✕横31.5✕高22㎝)に殻長10cmクラスのドブ貝3個投入。
使い古しのソイルを底床に使った。
餌はタナゴ水槽の水作エイトにこびり付いたデトリタスのしぼり汁。
淡水二枚貝にはオスとメスがあるようです。
だから1個では繁殖できません。
複数個入れて産卵と授精をさせる必要があります。
今回は3個投入しましたが、通常は1個でも餌の量ぎりぎりです。
ドブ貝の餌(タナゴの糞で作ったデトリタス)
屋内で飼育しているタナゴ水槽の水作エイトのフィルター。
しばらく使っているとフィルターはタナゴの糞と餌の食べ残しで真っ黒になります。
この汚泥(デトリタス)を使って二枚貝の餌を発生させます。
タナゴの産卵母貝はタナゴの糞で賄わせるというコンセプト。
(金魚でも熱帯魚でもデトリタスは作れます)
デトリタスを投入し攪拌した状態の容器
汚泥を容器に投入し、かき混ぜます。
この設備にエアレーションを施し、太陽光を当てて二枚貝の餌である珪藻を発生させます。
●デトリタス投入は月2回。攪拌は週1~2回
●デトリタスの腐敗で水が傷んできたら半分換水する
これで飼育設備は整いました。
次は二枚貝を繁殖させます。
淡水二枚貝の繁殖方法は特殊で、孵化した稚貝は魚の体に一定期間寄生しないと生きていけません。
そこで飼育容器に寄生用の魚を投入します。
6月初旬、上記の設備にカワヨシノボリを2匹入れました。
20日後ヨシノボリの体にグロキディウム幼生の付着を確認。
ヨシノボリに寄生したドブ貝のグロキディウム(全体)
胸鰭
背鰭
尾鰭
このようにヨシノボリのエラやヒレに稚貝(グロキディウム幼生)が付着しています。
貝が寄生すると、魚はその箇所を粘膜で補修し、包み込みます。
こうして魚の粘膜に保護された状態でグロキディウム幼生は2週間程度寄生生活を送ります。
寄生確認から2週間経過し、ヨシノボリの体から幼生の姿が消えました。
寄生生活を終え、底生生活に移行したようです。
ここからは親貝に餌を与えつつ稚貝の成長を待ちました。
着底から78日後にソイルをさらうと、10個ほど稚貝を確認。
ドブ貝の稚貝(殻長4㎜)
親に比べ舌を出してよく移動します。
ドブ貝の稚貝 (動画)
このまま越冬し、翌年の春には6㎜に成長しました。
ドブ貝が着底から2ヶ月余りで4㎜まで成長したのは興味深いですね。
まず短期間で身体を作り、その後はゆっくり成長する点は、魚と共通します。
熱帯魚でも日本淡水魚でも体長1㎝程度から成長が緩やかになりますからね。
その後8月の猛暑で水温35℃の日に親が全滅しました。
稚貝もソイルからは発見できず。
ここで増殖実験終了。
●高温対策
(夏場は飼育容器を日陰に移動、直射日光除けに半分フタ等)
●1設備当りの飼育数を減らす
(二枚貝の餓死予防)
●飼育容器を大きくして水温や水質の変化を緩やかにする
●ドブ貝ではなくイシ貝、マツカサ貝などの小型の二枚貝を使う(小型二枚貝にすることで餌の消費量を抑える)
●繁殖用に小さい容器を使うとグロキディウム幼生の寄生確率が上がる
以上のような改善をすれば、親貝と稚貝をより長期飼育できると予想します。
実験から小学生でもドブ貝の繁殖自体は可能と判断できました。
この方法を皆で普及発展させて淡水二枚貝の飼育ハードルが下がり、タナゴの繁殖用の貝も長生きさせることができれば理想的ですね。