今は,12月下旬。雨雪よけの付いた商店街を,あの,体を針で刺すような寒さが駆け抜けている。木々は地肌を見せ,人々は,白い息をはきながら行きかっている。季節が季節なので,町ではワイングラスから,溢れんばかりのワインのように,アベックが行きかっている。 ・・そしてそんな外では,雪もぱらついている・・・・。
「・・・・・・憂鬱だなァ・・・ ・・ 。」
川本 正弘は,名古屋の中区大須にある,格安の漫画喫茶の寝泊りブースの一角で,イスにもたれ掛かりながらそう呟いた。
彼にとって,今日という日が,ただただ過ぎていくという日々が,もう何日続いているだろう・・・・・。
あることがきっかけで職を失った川本は,かれこれもう丸六年,わずかなアルバイトで職をつなぎながら,漫画喫茶で寝泊りする生活を続けていた。
今は,漫画喫茶という便利なものがあるからいいものの,この生活を始めた頃はほんとに歩道橋の下などで寝泊りをしていたため,今頃の季節は,震えながら日々過していた。 >続く。