悩んだ…
ものすごく悩んだ。
10月くらいから、荒川の土手で見かける子。
この時は、親猫と兄弟猫が、傍にいた。
まだ人間が怖いらしく、寄りつくことはなかった。
それからしばらくして、見かける姿は、一匹だった。
親猫の姿はなく、兄弟猫も傍にいない。
このまま人間と、少しの距離を置いたまま、大人になったなら、きっと連れて帰ろうなんて思わなかった。
荒川の土手に住む「地域猫」という、生き方を選んだと、解釈して、他の猫と同様、見守っていくつもりだった。
今から1週間前くらいだったろうか、いつものように寝床付近を通ると、子猫が香箱座り(モドキ)で佇んで、こちらを見ている。
ボランティアさんが、雨風しのげるように、と、子猫のために、木材で小屋を作ってくれ、その前には、毎朝餌が置いてあり、それはまだ少しだけ、残っていた。
「逃げてしまうかも…。」
と思いながら、近くによってしゃがんでみる。
すると、子猫はまっすぐに、私へと駆けて来た。
撫でると、ゴロゴロと嬉しそうに、身体を擦り付けてくる。
ニャ~ニャ~、と何かを訴えながら。
夏生まれの子猫はきっと、この寒い季節があることを知らず、あまりの日常の寒さに、驚いてしまったのかもしれない。
「どうしたの?
あまりの寒さに、野良猫が嫌になっちゃったの?
ウチの子になる?」
戯れに、そんな言葉をかけてみる。
ニャ~…
…肯定されたような気がした。
自分から声をかけておいて、その反応に戸惑う私。
木材で、一所懸命につくられた猫の部屋。
風で飛ばされないよう、瀬戸物で作られた食器。
この子は、野良猫だけど、ちゃんと人間の愛情を貰っている。
連れて帰る必要があるのだろうか…。
寒いだろうけど、今年を乗りきれば、きっと外で暮らせる逞しい猫に成長するだろう。
迷いながらも、私は立ち上がり、子猫に手を振り、その場を後にした。
寂しそうに見えた猫の表情が、とてもとても、目に焼き付いた。
その後1週間、ずっと考えた。
家猫にするなら、
①ずっと部屋の中で飼うこと。
②避妊手術を行うこと。
③身体を洗うこと。
④爪を切ること。
etc…
「人間と暮らす」ということは、
猫にとって、沢山の不自由を強いられる。
それが子猫にとって、荒川の土手で暮らすより、幸せなことなのか。
荒川の土手で暮らしたとしても、避妊手術は免れないかもしれない。
だけど、それでも広い外、好きなだけ原っぱで遊び、お風呂や爪切りなどの制約を受けなくて済む。
寝床やごはん&お水だって、ボランティアさんが与えてくれる。
このままあそこにいた方が、猫としては幸せなんじゃないだろうか…。
悩みに悩んで迎えた12/10。
また、あの子猫の所へ行ってみる。
お昼寝してた身を起こしてまで、私にすり寄ってくる子猫。
子猫に人間の言葉は、わからないだろう。
それでも、子猫に訊いてみた。
「寒いの辛い?
独りは寂しい?
だけどここには、
寒さをしのぐ部屋を作ってくれた、優しい人がきてくれる。
ごはんもお水も、もらえてるね。
好きな場所に行って、遊べる。
ウチの子になったら、
お家の中だけでしか、遊べないよ。
お風呂だって入れられちゃう。
自慢の爪も切っちゃうよ。
だけど…
ごはんもお水も、毎日あげる。
お部屋の中は、いつもあったかい。
どうする?
君はどうしたい?
不自由もあるけど、それでも君は、ウチの子になりたい?」
ニャ~
答えが返ってきた。
いや、私の都合のいい解釈かもしれない。
だけど、その鳴き声を聞いた時、
私も、覚悟を決めた。
キャリーバックは持っていなかったから、
子猫がゆうに入る、大きめの買い物トートにタオルを敷き詰めて、
子猫に促すように、子猫の目の前で拡げた。
す…と、入る子猫。
私が少し、戸惑うほどに、す…っと。
それからは、一目散に家路へと、小走りに向かう。
時々、
「ごめんね。
もうすぐだからね。我慢してね。
もうすぐたからね。」
と、声をかけて。
「子猫」といっても、おそらく4ヶ月程度。
子猫らしい可愛い盛りは、下降気味。
それまで、外で生きてきた子猫。
その子猫を家で飼うことは、思っているより、容易いことではないかもしれない。
それでも、買い物トートに入ってくれた瞬間に、
一生、この子のお世話をさせてもらおう。
そう心に誓った。
買い物バックが居心地よかったのか、
家についても、暖かい身体を、呼吸に躍動させながら、
子猫は眠っていた。
小さな宝物に私は、
「みかん」
と名付けた。
今まで、野良猫を愛でることは、沢山あった。
「猫と暮らす。」
ことは、私にとって、生まれて初めての経験である。
12月11日現在のみかん。まだ少し、環境の変化にびびってます(;'∀')