結局、熱が下がったのは2日後。
その間ずっと一緒にいたからか潤は俺の前では泣かなかった。
違うな、泣きつかなかっただけか。
タオルケットの中顔を埋めては鼻をすすったり、
「冷えピタ替えよう」
ってタオルケットを引き下げれば目は充血、周りは擦ったせいで赤くなってる。
それでも、
「ありがとう、しょーくん」
がらがらのかすれ声で無理矢理笑顔を作る潤。
結局完全に熱が下がって、智くんから起きて下でご飯を食べてもOKが出たのは(うちの絶対君主は智くんだから、智くんからOKがでない限り全てNG)、9月に入ってからだった。
だから、ニコニコの潤が見られて嬉しい。
一通りご飯を食べた後、きょろきょろ、きょろきょろ、俺たちを見る潤。
みんな知らんぷりしてるけど、だんだんへの字なっていく潤に敵うものは誰もなく、
「さ、ケーキなっ!」
俺が言えばみんな頷いて、ケーキを潤の前に持っていきローソクを立て火をつける。
「はっぴばーすでーつゆー」
雅紀が歌い出す。
「はっぴばーすでーでぃあ、じゅーん」
ギターを片手に和也が歌う。
「「Happy Birthday、潤」」
「さ」
コクンと頷いた潤はローソクの火を吹き消した。
次々に渡されるプレゼント。
ジーンズだったり、本が好きな潤のためのブックカバーだったり、ずっと欲しがっていた緑のクマの人形はわざわざ買いに行ったのか?
智君は潤だとしか思えない男の子が柔らかい光の中で両手を伸ばしてるパステル画だ。
何も出さない俺にしびれを切らした潤が、
「しょーくんは?」
「ん?俺の?……ふふ」
「なぁに?」
「もういいだろう?智君」
「しょうがないなぁ、変なことしないことだけは約束してくれよね」
「もちろん、未成年だしね」
「しらんわ、好きにし」
ふふふ。
はてな顔の潤の手に俺の部屋の鍵をのせ、
「好きだよ、潤」
そう言って頬にキスをした。
「しょーくーんー!!!」
まあ、その後の事はご想像にお任せします。
潤の部屋と隣の俺の部屋の壁を壊そうかって、計画してることを智君にばれてげんこつをもらったのは後日の話。
続ナマエ おしまい