そうして、2人は成長していく。
心も、身体も。
でもボクには2人の心の成長を見るのがなによりうれしかった。
すぐに自転車に乗られるようになった湊海。
湊海と矯生を連れて自転車でじゅんちゃん家に行けば、驚くと共に2人の成長を喜んでくれた。
「自転車に乗られるようになった2人にお祝いをしなくちゃね」
「いいよ、じゅんちゃん」
「ふふ。
ヘルメットも膝当ても肘当てもちゃんとつけてるから、何かないかなぁ、なんて。
これからみんなで自転車でお出掛けしない?」
「どこいくぉ?」
「じゅんちゃんさんピアノは?」
「ピアノはあとあと、いつでもできるんだから!
近所のパン屋さんねケーキがとても美味しいんだ。
とっても美味しいんだよ。
お祝いのケーキをたのんであるんだ、取りに行こう!」
「ええっ!ボク行ったことある?」
「無いよ。
しょーたちゃんも初めて。
とても美味しいんだよ、それに……あん、なんでもない、行こ!」
じゅんちゃんの言った「それに」が気になる。
じゅんちゃんウソつけないからなぁ。
「けーき!」
「とたぱぁ、いいの?ごはんの前だよ?」
ほんとは食べたいくせに遠慮して。
「もちろん!ボクも食べたいよ!」
「けーき!」
「ケーキ!」
「じゅんちゃんのケーキ!」
「じゅんちゃんさんのケーキ!」
「じゅちゃさのけーき!」
「ちょいっ!ボクが作ったんじゃないよ、ケーキ屋さんだよっ!」
「「「じゅんちゃんのケーキ!」」」
2人のヘルメットをしっかりと確認してからみんなで自転車に乗って出発した。
そこで待っていたものにボクは言葉を失った。
……うれしくて。
とてもうれしくて。