「隣、いいか」
少しずつ落ち着いてきたのを見計らった頃、
『そろそろ一人になってみる?』
智君が言ったのは、陸人と斗真がユニットを組むと噂がたったからだ。
今は彼奴がこの会社を仕切っている。
二人を日の光のもとでと奔走してくれるのはありがたいが、憎い奴には変わりない。
あの冷たい声は俺の耳に刻まれている。
顔にあの日の傷の名残はないが。
その男が今俺の横に。
「俺の店じゃない。勝手にどうぞ」
「ふふ、相変わらずの態度だね」
「意味がわからない」
「櫻井、あの日あそこにいたな、お前」
「……」
「陸人と斗真をありがとう。あの二人はもう大丈夫。俺が責任を持つ」
カランと氷が崩れる。
それをただ見ていた。
「潤を愛してくれてありがとう。それを一番に伝えたかった」
「そんなこと、お前に言われたくない」
「だよな」
「そんなことを話しに来たんなら帰る」
がたりと椅子を立てば、
「待ってくれ!潤の、潤の事なんだ!」
震えるような声で俺の肩を掴んだ滝沢は、
「あの子は、あの子は生きているんだ!」
そう叫んだ。