「これ、見てください」
先程までの顔は微塵も見せずにDVDをセットすると部屋のすみ、壁を背にして立った。
そこには子供達が楽しそうに運動会をする姿。この画像にいったい何があるのかわからない。
それでも、何も言わず見ていたが運動会は終わりを迎え、園児達の笑い声と共に映像は終わってしまった。
「……」
「気がつかなかった?」
「?」
またリモコンを手に取り今度は早送り。ある一点になったとき止めたその先に写っていたのは、
「二宮……とあの女……」
腹の大きな女と二宮が。
「つぎ、ここ」
そこには二宮の母親が鬼の形相で立っている姿。
「これは……」
「次はこれ」
彼女とよく似た子供が、二宮の母親と手を繋いで、笑いながら買い物をする姿だった。でも、この映像は時間が合わない。確実に数年が経過している。あの腹の子とこの子では年齢的にあわないんだ。
なんだこれ?
この家族に何が起きたって言うんだ?
「最初の画像は二宮が……認知しようとしていた、自分の子供を妊娠している女。
二宮は自分の子と疑わなかったらしいが母親がその嘘を見抜いた。違う男の子供だと」
「だからあの表情……」
「次に写った子はね、二人の子供なんだ。DNA鑑定をしたから確実。
それで母親はあの子を受け入れた。かわいい孫のために二人の結婚を許した。
……でも、違った。
それに気がついたのは他でもない二宮なんだ。
彼女は2社に鑑定依頼をしていた。
日本とアメリカ……結果は同じじゃなかったんだよ。二宮達に見せたのは、金を積めば内容を改竄してくれるアメリカの会社のものだった。
悲しいね。
さらに悲しいことに問い詰めに行こうとしたその場所で、愛する人は別の男と痴態を繰り広げている。
そして、聞きたくなかった息子の父親の名前。
ここからは憶測だけど本気で殺すつもりだったんじゃないかな?自分の息子と信じて一緒に暮らし結婚も間近だったんだ。騙されていたと知ったその心持ちは幾ばくか。
けれど子供には愛情を抱いていた。そして彼女を傷つけることはできなかった。彼もまた、彼女を愛していたから……幸せを夢見ていたから。
母親を子供から奪うことはできない。戸籍上の父親の自分が犯罪者になることはできないそう思って殺すのをやめた。
なのに……殺人犯として警察に捕まってしまったんだ。彼女とあの子供の本当の父親の手によって」
切ないな。
けれど、事実は詳らかにしなくてはいけない。
「深山……終わらすか?」
「終わらせましょう、もうこれ以上時間をかけても意味がない。小さな子供を傷つけたくはないけれど……」